閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

509 待ち遠しや

ちよいと寄り道。 ささつと一ぱい。 かけを、おくんなさいな。

508 本の話~胸を張るお手本

『料理のお手本』 辻嘉一/中公文庫 "お手本"とはまた思ひきつた題を附けたものである。仮にわたしが"文章のお手本"などと附ければ、袋叩きにあふのは間違ひない。併し世の中には少いながらも、"お手本"を書ける…書いても不思議ではないひとがゐるもので、こ…

507 寒くなつたら

定食を平らげ、その辺を歩いてから。 夜はおでんと焼鳥で、地酒を一ぱい。 もしかすると、二杯か三杯も。

506 誘惑、また

迷ふのも、味のうち。 罐麦酒を、片手に持つて。

505 好きの話は六づかしい

世界史を俯瞰して、何となく好きなひとをひとり挙げませんかと訊かれたら、わたしは多分、カエサルの名前を出す。洋の東西を問はず、尊称が個人と結びつく例は、三藏(玄奘三藏)や大師(弘法大師)で見られるけれど、苗字が個人を指し示す例は少ないと思ふ。こ…

504 誘惑

迷惑。 と断ぜられない我が心の弱さ。

503 リリパット・ブレックファスト

尊敬する内田百閒は日に一ぺんしかお膳につかなかつた。本人がさう書いてゐたもの。正しそれは一日一食でなく、お膳を用意して食べるのが一ぺんの意味。朝は英字ビスケットやら果物と牛乳、晝はもりかかけ(麦めしに塩辛い鮭や梅干やたくわんのお弁当を用意し…

502 ある晩突然どうしても

ある晩どうしても焼き餃子が食べたくなつた。かういふ突然の慾求はたちが惡い。 近所のマーケットに行けばパックに入つたのを賣つてゐるがそれだと寧ろ我慢出來なくなるだらう。 冷凍ものを食べる気持ちにもなれない。 無理をして我慢して食べると腹が立つて…

501 本の話~いのちの顔料

『梟の城』司馬遼太郎/新潮文庫 天正九年…西暦でいへば千五百八十一年、伊賀の忍びは織田信長麾下の軍勢に擂り潰された。伊賀天正ノ乱と呼ばれる戰である。辛うじて生き延びた伊賀衆が信長にうらみを抱いたのは云ふまでもない。併し伊賀忍は自らの手で本懐を…