閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

835 ごく安つぽいあのカメラ~續 たちの惡い記憶

ごく短い期間、ライツ・ミノルタCLを使つた。半ば衝動買ひ。そんな買物が出來たのは、露光計がいかれた分、廉価な個体だつたからである。コシナ・フォクトレンダーのカラースコパー35ミリ(ねぢマウントのやつ)を附けた。 まあ實に安つぽいカメラだつた。握つ…

834 たちの惡い記憶

小さなフォーマットで、レンズ交換の出來るカメラがあつた。ペンタックスの「Q」とニコンの「1」がさうで、どちらも数年で姿を消した。どちらも買はうかどうか迷つてゐる間(おれは優柔不断のベテランなんである)に製造が終つたことを思ふと、不人気…少くとも数寄…

833 それぢやあの親子丼

甘辛いつゆで鶏肉を煮て、溶き卵でとぢたのを、丼に盛りきりのごはんに乗せたら、親子丼が出來上る。以前ざつと調べた時の記憶を辿ると、最初は店で出さず、食べたければ出前を取るしかなかつたらしい。どうも料理屋で盛りきりめしを出しまた食べるのは、品…

832 融通

天麩羅とおでんに共通するのは、元々が串に刺して供された点である。串一本が四文とか、廉なおやつだつたといふ。丁稚さんがお使ひの途中、こつそり食べてゐたのだらう。一本幾らだから、賣る方も食べる方も、勘定が樂だつたにちがひない。尤も天麩羅とおで…

831 中庸無難

コンビニエンス・ストアのおでんが中々にうまいとは、最近まで知らなかつた。偶々五種類くらゐの種を袋詰めにしたのを見掛けて、何の気もなく買つて食べたら、こりやあ惡くないぞと驚いたんである。きちんとお出汁を引いて、きちんと下拵へした好みの種を、…

830 仄暗い部屋

この稿を書いてゐるたつた今、雨の音が聞こえてゐる。その音は窓外の仄暗さと寒さを聯れ、暖房も灯りと使はない部屋に染み込むやうで、何とも快い。その部屋でラヂオを附けつぱなしにして、その辺にはふり出した吉田健一の短い随筆に、散ら散ら目を通すのは…

829 一抹

画像はそれなりに顔を覚えられただらう小さな呑み屋で出すツナ・マカロニ・サラドである。マヨネィーズは少めで、黑胡椒を効かしてある。マカロニの数へ方は知らないが、兎に角すこしづつ摘むと酎ハイなんぞをゆるゆる樂める。 かう書いて気がつくのは、割り…

828 マンネリズム

呑みに行くと肴を撮る。 さういふ癖が身についてゐる。 まことにお行儀が惡い。 その程度の自覚はある。 自覚はあるけれど、癖だから仕方がないとも思つてゐる。 かういふのを居直りと呼ぶ。 屁理窟を捏ねれば、自分の頭に入らない分を、撮ることで補つてゐ…

827 新品

GRⅢを買はうと思つてゐる。 リコーの"高級コンパクト・デジタル・カメラ"…と云つたら、我がカメラ好きの讀者諸嬢諸氏はきつと、失笑を浮べるだらう。おれもさうだ。GRⅢは發賣から暫く経つてゐるのになんでまた今さら。とも云はれさうで、そつちはおれがリコ…

826 厭らしい話

どうも呑み喰ひの話が多い。おれが書いてゐるのは『閑文字手帖』なのだから、その手の話題でなくたつて、かまはないのだけれど、直ぐにその手の話題を撰んでしまふ。安直と云はれたら、反論が六つかしい。尤も安直でいけないのかと反論する余地はある。食べ…

825 順序立て

過日、某所にある某呑み屋に足を運んだ夜の短い話。 焼酎や泡盛がうまい。蒸溜酒なんてどこで呑んでも一緒ですよと思ふのは間違ひで、ヰスキィのソーダ割りがありますな。あれは上手なバーテンダーが作ると實にうまい。ヰスキィとソーダがひとつになつて、炭…

824 不思議ではない

尊敬する吉田健一の随筆に、食堂車で"ハム・エッグスにソオスと辛子を塗り"たくつたのを摘みに、麦酒を呑む一節があつて、確か"(ウスター・ソオスは)西洋の醤油"なのだと續いてゐた。感心したのは忘れ難い。一ぺん試してみたいのだが、食堂車自体が稀になつ…

823 安蕎麦を弁護する

蕎麦好きには莫迦にされるから、あんまり云ひたくはないのだが、おれは立ち喰ひ蕎麦が好きなんである。と書いたら 「ああいふのは蕎麦とは呼べない」 「だから丸太の舌は駄目なのだ」 我がシビアな讀者諸嬢諸氏から、厳しい指摘が出てくるだらうことは解つてゐる…

822 摘んで咬んで

肉味噌と聞いたら無闇に昂奮する。どんな経緯で成り立つたかは知らない。勝手な推測を云ふと、ミート・ソースからの応用ではないかと思ふ。根拠は無いから、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、信じてはいけません。 過日、某処の立呑屋に顔を出した夕刻の話。そこ…