閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

644 漫画の切れ端~手天童子

記憶に残る旧い漫画の話。 永井豪といふひとは、天才であつた。かう過去形で書くと怒られさうでもあるが、天才になる困難より、天才であり續ける苦難の方が遥かに巨きい。 ある夫婦の元に、鬼が赤ん坊を預ける。 赤ん坊は"天の手から与へられた子供"の意味で…

643 大きにある

始、 落ち着いて考へると、とんかつをあてにして呑んだ記憶が無い。別に厭ふわけでもないのに。鯵フライやミンチカツで呑んだことはあるのに。とんかつと聞いて聯想するのは、ねり辛子と濃いソース、それから千切りのキヤベツとお味噌汁とたくわんに白いごは…

642 無念の茄子

茄子を食べるようになつたのはここ数年である。要するに食べず嫌ひだつた。今もお漬ものは獨特の歯触りが駄目で、炒めたり焼いたりしたのでないと、旨いとは思へない。 最初に旨いと感じたのは、今はもうなくなつた定食屋で食べた"茄子の肉味噌炒め定食"だつ…

641 有用な註文

呑む時には食べる。といふのがわたしの原則である。麦酒やお酒や葡萄酒、或は焼酎泡盛ヰスキィでも、事情は変らない。但し絢爛豪華な満漢全席やガルガンチュワ的なフル・コースを求めてゐるのではなく、たとへばチーズの欠片とハムの端つこ、サラミや落花生…

640 愛國気分の定食

ごはんと汁もの、小鉢、お漬ものの定まつた組合せに、主役のおかずを組合せて出される形式を、この稿では仮に定食と呼ぶ。さうではなくても定食と呼ばれることはあるが、残念ながら、例外にまで目を配る時間は無い。 定食の主役は前述のとほり、おかずである…

639 麦酒とベーコン

『麦酒は、(大麦の)麦芽、ホップ、水(後に酵母も追加された)のみを原料とする』 さう定めたのは、十六世紀初頭のバイエルン公ヴィルヘルム四世。麦酒純粋令と呼ばれる。五百年を経た廿一世紀でも有効で、現役の法としては世界最古の部類に入るのではないか。…

638 横長のお皿

近年も日本人の箱庭好みといふ見立てはあるのだらうか。たとへば盆栽、たとへば懐石料理。或は袖珍本。もつと云へば軽自動車だつて、その括りに入りさうな気がする。我われ(のご先祖)はどうやら、巨きさに値うちを見出だすことが少いか少かつたらしい。 では…

637 この時点の感想

某日、ニコンから新型機種…Zfcの發表がありましたな。 https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_fc/ 詳しいことは上を見れば大体、解ると思ふ。尤もこの稿を書いてゐる時点では、發賣前だから、實機がどうなのかまでは、はつきりしない。 …

636 休憩

歳時記や廿四節気、七十ニ候に目を瞑り、勝手な印象で云へば、新暦の七月に入ると、夏になつたと感じる。八月半ばまで。九月くらゐまでが残暑。 例年、おほむねこの三ヶ月間は、頭が働かなくなる。そんなら残りの九ヶ月間は、頭が働いてゐるのか。そこはまあ…

635 天麩羅饂飩小考

『じゃりン子チエ』の作中では、"(だるま屋の)天プラうどん"で一貫されてゐて、何度も目にすると、旨さうな気がされてくるのだが、この稿では原則的に天麩羅饂飩とする。 種ものとして見れば、蕎麦の方が適ふと思ふ。 海老に貝柱。笹掻き牛蒡。春菊。枝豆。…

634 茹でるのと思想と

茹で玉子を偶に食べたくなる。こまる。といふのも、わたしは卵の買置きをしない…食べきれずに傷ますのは勿体無いもの…からで、茹で玉子を食べるのと、卵を買ひに行くのはほぼ一直線に結びつく。 三個。小鍋に置いて水をたつぷり張り、塩は入れず、弱火で。沸…

633 みつめるひと

おねえちやんがゐる、あすこまで。

632 数字の示すもの

オムレツを焼くのは随分と六づかしいといふ。ここで云ふのは西洋風のオムレツ。映像で見ると、くるくるとんとん、なんてこともなささうにフライパンを操つてゐるが、くるくるとんとん操るだけで、溶き卵がアーモンドのやうに纏まるのだから、容易い技術の筈…

631 待合せ

あと、三歩。

630 好きな唄の話~サマーヌード

夏はエロチックである。 我が國詩歌の伝統を顧みるに、夏に唄ふのは、夜に吹く秋を思はせる風や、水面に映る月蔭の涼やかさである。『枕草子』にいはく。 夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかに…

629 寒風を待つ

北の杜へ。

628 スタミナ

食べものの味附けと称してよく解らないのは、サラダ味とバーベキュー味ではないかと思ふ。それぞれに何となく、共通する傾向はあるのだが、さてそれがサラダやバーベキューの味なのか知らと云へば、首を傾げざるを得ない。 スタミナ焼きはもつと解らんですな…

627 曖昧映画館~座頭市

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 以前に『座頭市物語』で取上げてゐなかつたか、と思ふひとがゐたら、そのひとはこの手帖の愛讀者であらう。但し座頭市映画の愛好家ではないとも思ふ。"物語"の就かない座頭市は昭和六十四年に完成し、平成元年に公…

626 ふるいはえらい

デジタル・カメラで撮つた、手元に残つてゐる最も古い画像の一群から。 平成十八年一月、東都は月島の片隅。 まだえらいと胸を張れるほど、ふるくはないかも知れない。

625 颯風戯よみ~あぢさゐ

朝風に 紫陽花の葉の 滴かな 七いろに 移るあの娘の こころかな

624 好もしいといふこと

空き腹を抱へ、潜り込んだ酒場で出てくる つんもり盛られた、熱い野菜炒め(肉入り) さて御同輩、ひとつ乾盃をば致しませうか

623 混ぜ

カップ麺といふのがありますな。 最近のは具だのソップだの何だのを小袋に分け、入れてあることが多い。實に面倒でいけない。 "よく混ぜてお召し上がりください"だなんて、添書が目に入つたりすると (どうしてよく混ぜなくてもいい風に作らないのか) と腹が…

622 小さなカメラの大きな宇宙

ミノックスといふラトビアはリガで生れたカメラがある。カセットに入つたフヰルムを使ふミニチュア・サイズ。旧式のスパイが、背広の内ポケットに隠し持つてゐるやうな大きさと云へば、ミニチュア・サイズの想像が出來ると思ふ。 開發は大変だつたらしい。ラ…

621 野暮と嫉妬

やあそこのおふたりさん。 二人乗りは危ないですよ。

620 特典

デジタル・カメラの有難さは、失敗を恐れなくてもいい事。 デジタル・カメラの厄介さは、失敗に頓着しなくなること。

619 イミテイション

助惣鱈などの擂り身をどうかうして、細くほぐれる加工を施し、蟹に似せた味を附けたのを、英語では imitation crab stick と呼ぶさうで、素つ気無いねえ。これを日本では蟹(風味)蒲鉾…略してかにかまといふ。 昭和四十年代の終り頃、我が國で開發されたらし…

618 好きな唄の話~番外篇

たれかが踊つてゐる。 ひとりで踊つてゐる。 その周りには人びとがゐて、しづかな踊りを見るでなく、目の隅に入れてゐる。 一心不乱の踊りはいつしか、周りの人びとに移り、大きなうねりになつてゆく。 ラヴェルが呉れた十五分間の奇蹟。 たれが云つたのか忘…

617 特別販賣

焼酎を一本奢つて 急いで家に帰らう

616 削る

生ハムをごりごり削る様は、どこか、ドネル・ケバブに似てゐる。 どちらももう、長いこと、ありついてゐないところも、似てゐる。

615 利きすぎの塩

画像は"中華風旨辛もつ煮丼"、八百五十円。"数量限定"の触れ込みに釣られて食べた。このお店は何度か足を運んでゐるから、下手を打つ心配は無い。 さう思つて食べると、確かにまづくはなかつたけれど、感心も出來なかつたから、少し驚いた。蒟蒻や大根、人参…