閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

813 スタミナ

肌寒い休日の晝、久しぶりにちやんとした空腹を感じたので、めしを喰ひに行つた。近所のお店なのは勿論である。外の看板には、"今週のおすすめ定食"と"今月のおすすめ麺"が書いてある。おすすめ定食が"豚ロース唐揚げ ネギソース"、おすすめ麺は"特製スタミ…

812 雨の予感

雨が降りさうな朝、くらい窓の外。 不意に夜は、蛸で呑まうと考へる。 半夏生は疾うに、過ぎてしまつた。

811 白子角右衛門

生没年不詳。 江戸末期の秋田の武士。 と書いて、ここから拡げられるだらうかと思つた。 三秒考へて、諦めた。 東北の日本海側は未だ訪れたことがなく、文字としての知識も、殆ど持合せてゐない。鰰やお漬物を肴に晝間つから呑むため、足を運びたいものだと…

810 逸れに逸れる

鶏肉の甘辛味噌炒め定食といふ品書きを目にして、旨さうだと思ひ、且つ麦酒を呑みたいと思はないのは、ひととして如何な態度だらう。勿論おれは如何なものかと思はれる態度は取らない。詰りお店に入り、席に着いて 「鶏肉の定食をお願ひします。それから、麦…

809 渾沌

沖縄ことばでは"まぜこぜ"を"ちやんぷるー"と云ふ。苦瓜や島豆腐のちやんぷるー…この場合だと混ぜ炒めとか、そんな意味合ひか…は旨いねえ。オリオン・ビールや残波でやつつけたくなる。尤も耻づかしながら、その語源は知らない。元から"ちやんぷるー"といふ…

808 ふつん

家に籠る生活は中々に面倒で、いや面倒とは正確さを欠く云ひ方かも知れず、徒歩五分で行ける範囲で、罐麦酒と煙草を買ふだけなのは、喜ばしくないなあと思つてゐる。別に好きで籠る生活になつたのではなく、さうしろと云はれたからさうなつたので、理不尽と…

807 本の話~星々の王國へ

『スター・キング』 エドモンド・ハミルトン(著)/井上一夫(訳)/創元推理文庫 復員兵のジョン・ゴードンは、ニュー・ヨークの保険會社に勤めてゐる。勇敢なパイロットだつたかれは、ある夜、眠りにつきかけた時、自分の名を呼ぶ聲を聞く。 ザース・アーン。中…

806 漫画の切れ端~ライム博士の12ヶ月

記憶に残る旧い漫画の話。 正直に云ふと、記憶には殆ど残つてゐない。 宇宙人の船から落つこちた(らしい)ロボットが、ライム博士の庭に転がり…いや墜落したところから、話は始まる。 始まるといつたつて、劇的なことは起らない。最後まで名前のはつきりしな…

805 好きな唄の話~Zean Zean

昭和の終り…千九百八十年代の後半、ほんの一瞬、併し強烈な輝きを見せた…PINKはさういふバンドだつた。 わたしと近い年代の小父さん小母さんはきつと、ソニーが提供した『Music TV』の洗礼を受けた筈で、そのオープニングに採用されたのが、この唄…正確には…

804 曖昧映画館~エイリアン2

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 原題は確か『ALIENS』だつたと思ふ。複数形の"S"がポイントで、英語圏の人びとはこの一文字で 「今回はあのエイリアンが二体以上、出るのだな」 と解つたのだらう。日本で『エイリアンズ』のタイトルだつたら、へん…

803 まぶされた分

某日。 お晝を食べに行つて呑むことが稀にある。わたしが属するニューナンブなら、蕎麦屋で玉子焼きか板わさかを肴にお酒が殆ど。駄目な小父さんの気分に浸れるのがいい。 「いやそれは、気分でなくつて」 實際に駄目なんですよと云はれたら、否定はしない。毎…

802 何年掛り

某日。 仕事が終る時間に、この季節としては珍しく、はつきり空腹を感じ、また食慾もあつたので、一ぱい引つ掛けることにした。お馴染みとは云ひにくいが、まあ顔は覚えてもらつた程度の狭い呑み屋。 先づは麦酒にマカロニ・サラド(黑胡椒が振つてある)、そ…

801 三分の特典

某日。 暑くつて空腹は感じるのに、食慾までには到らないお晝に食べるのは、冷たい麺が有難い。さて画像をご覧ください。品書きには 「特製冷しラーメン」 と書いてあつた。特製を名乗るくらゐだもの、うまいにちがひない。さう思つて註文したんである。先に麦…

800 率

八百万とか嘘八百とかで使はれる八百の、その八百といふ数自体に意味はない。数へきれないほど、たくさんなんですよと、さう云つてゐるので、多数を象徴する記號と考へれば宜しい。ぢやあなんでまた八百なのかと思へてくるが、漢字の八は末廣がりで縁起がい…

799 始めるところから始める

翻るとわたしの讀書遍歴は最初で躓いてゐる。母親の影響をまともに受けたのは間違ひなくて、その母親には少女小説好みが色濃かつた。今もさうだと思ふ。併し不思議なくらゐ詩集や歌集とは無縁で目にした記憶がない。古今や新古今は勿論、萩原朔太郎も中原中…

798 遊戯風の贅沢

伊丹十三のエセーで讀んだのは間違ひないが、前後の文脈は忘れて仕舞つた。記憶に残つてゐるのは"ダッグウッド・サンドウィッチ"といふ単語で、三段だか五段だか、兎に角ハムだのやはらかく炒めた玉子だの、トマトにレタースにチーズにベーコンにピックルス……

797 曖昧な焼賣

以前から飽きず書いてゐるのは知つてゐる。知つてゐてまた書きたくなつたので書く。いやその前に書きたくなつた切つ掛けの画像をご覧いただくのだが 焼賣である。近所の呑み屋で出してゐる。品書きには焼賣の前に円の中に"旨"の字を入れた記号が附いてゐてマ…

796 眞似出來ない豆腐

画像は[梯子どんたく~澤乃井篇]でも書いた、奥多摩は澤乃井園にある[豆らく]で出す、おぼろ豆腐御膳…の一部…といふより主役の部分。前に見たのと色みがちがふなあと思ふひとには、常用するAQUOS sense3のカメラ機能の所為だと云つておく。 (修整するのも面…

795 土曜日の焼き饂飩

先日コンビニエンス・ストアでふと目に入つた焼き饂飩を食べてみた。四百円くらゐだつたか。まづくはないが、感心もしなかつた。まづくないのは当り前で、さうでないとコンビニエンス・ストアの棚には並ばない。 食べながら不思議に思つた。 第一に焼き饂飩…

794 手を打つマカロニ・サラド

馴染みがありさうで、案外さうでもない…かも知れない食べもの順位表を作つたら、マカロニは上位に食ひ込むと思へる。わたしの場合。イタリー人とモリコーネとイーストウッドには申し訳なく感じなくもないが、きらひな食べものでもない。そこら辺でひとつ、手…

793 上手の天麩羅

過日、ちよいと一ぱいを引つ掛けた時のつき出し。 ご覧のとほりの天麩羅で、見た目はまあ、仕方がない。 天麩羅屋で呑んだのではないもの。 画像では判りにくいので云ふと、種は茄子と烏賊。 正直なところ、困つたなあと思つたのは、わたしが茄子を苦手にし…

792 おまかせ円盤

当人から聞いたわけではないが、外ツ國の客人が日本の料理屋で驚くのは、品書きに 「おまかせ」 があることださうだ。何だこれはと思ふらしく、気持ちは判らなくもない。何が出されるか、適正な値段なのか、そもそも美味いのか、見当がつかないんだもの。わた…

791 赤い星

暑い時節に呑む麦酒は壜詰が望ましい。 生麦酒だと一ぺんに干して仕舞つて、いやそれも喉の快感ではあるのだけれど、酷暑に適ふのは壜詰だと思ふ。好みの話だから、気にしなくても宜しい。 併し最近になつて思ふのは、わたしが好きで、且つ壜麦酒を置いてゐ…

790 本の話~第壱號カルテ

『カメラバカにつける薬』 飯田ともき/インプレス 漫画である。この手帖には"漫画の切れ端"といふカテゴリもあるのだが、あつちで取り上げるのは旧作だから、"本の話"で扱ふことにする。 知る限り、同人誌發。今はデジカメWatchといふWebサイト、それから紙…

789 冷し中華の荒涼を

冷し中華の文字を見ると昂奮する。 暑い時季は何しろ食慾が出ない。だから、素麺や冷や麦やざる蕎麦でなければ、豆腐が主食になる。併し素麺冷や麦ざる蕎麦豆腐では、栄養といふか何といふか、さういふのが乏しい。食慾が出ないのと、空腹を感じるかどうかは…

788 ワイド・コンヴァータ

過日、所用があつて中野に出掛けた。所用と云つても大したことではないから、詳しくは触れない。 そつちを片附けた後、Fカメラ店を冷かす積りで入つた。さうしたら我がGRデジタルⅡ用のワイド・コンヴァータが置いてあつた。それはいい。實はこつそり探してゐ…

787 梯子どんたく~余談篇

帰宅した翌日…月曜日…は有給休暇を取つて、パンツを洗つた。だからこれは余談篇である。筋が通つてゐるでせう。 ニューナンブの皆が揃はなかつたこと。 暑さが莫迦ばかしいくらゐだつたこと。 この二点(都冩美に行き損ねたのも加へるべきか知ら)を除くと、今…

786 梯子どんたく~昭島篇

昭島驛に降りたのは午后二時過ぎ。かう書くと我が親切な讀者諸嬢諸氏は、チェック・インには早すぎではないかと心配して下さるだらうが、我われは東横インの會員である。會員は午后三時にアーリー・チェック・インが出來る。驛前のモリタウンだつたかで晩め…

785 梯子どんたく~澤乃井篇

体調が惡くなつたのですとS鰰氏から聯絡があつたのは、どんたく当日週の中頃で、それは止む事を得ない。その暫く前にクロスロードG君からも、諸事情での不参加の報せもあつた。お酒はいいものだが、不調や事情を押して呑むものではないし、押して呑んでもま…

784 梯子どんたく~準備篇

澤乃井に行くには当然、電車を使ふ。 頴娃君が可及的速やかさで予約してくれた藏の見學は、午前十一時の回だから、そこに合はせなくてはならない。澤乃井に行く為の最寄は、青梅線の沢井驛で、青梅線は本数が少い。先行して時刻表を確める必要がある。わたし…