閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

468 れんげ盛り

焼飯にウスター・ソースをかける。 醤油ラーメンに酢や辣油を垂らす。 といふのはお行儀の惡い食べ方である。週末の午后に家で食べる分にはかまふまいが、さうでなければ、詰りお店で食べる場合は、實行しない方が無難であると思ふ。 ただお店の焼飯…こつち…

467 うで玉子ふたつ

ふとその気になつて、たぬき蕎麦を啜つた。東京風の揚げ玉を散らしたやつ。立ち喰ひ蕎麦の種ものも色々とあるけれど、蕎麦でやつつけるなら、たぬきが一ばん気らくに思はれる。牛蒡の掻き揚げや春菊の天麩羅だつて惡くはないにしても、蕎麦つゆに対して些か…

466 変格不便

ライツ社のレンズにデュアル・レンジ・ズミクロンといふMバヨネット・マウントのレンズがある。『ライカポケットブック』(デニス・レーニ/田中長徳/アルファベータ)を参照すると 附属のゴーグルを附けることで十九インチまでの接冩が可能になり、パララック…

465 本の話~巨山に挑む

『ツァイス 激動の100年』 アーミン・へルマン(著)/中野不二男(訳)/新潮社 レンズ好き冩眞好きにとつて、第一等のブランドと云へばツァイスである。ライツ・ライカにも優れたレンズがあるのは勿論だし、ニコンにも豊かな伝統があるのは認めつつ、矢張りツァ…

464 魅惑ののり弁

普段のわたしは言葉の省略を好まない。たとへばデジカメではなくデジタル・カメラ、或はパソコンではなくパーソナル・コンピュータ。特にカタカナ言葉の場合、省略した表記は要するに符牒であつて、それは何も意味しない。元の意味と略された表記を結びあは…

463 出し月かも

阿倍仲麻呂。八世紀のひと。貴族で政治家で文人。祖父に阿倍比羅夫を持ち、系譜には安倍晴明がゐるといふが、こちらは怪しい。遣唐使として渡唐。帰國に際して開かれた宴席で詠んだと伝はるのが あまの原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも の一…

462 未完成のまま

特別急行列車に乗りたいと思ふ。 どこに行かうといふのではなく。 元來わたしは出無精な男である。麦酒と煙草、お米とお漬物、それから気に入りの本があれば、外に出なくても平気なたちなのだが、だからと云つて何がなんでも外に出たくないのではない。外に…