閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

605 日記に就て

最近また『断腸亭日乗』(岩波文庫の磯田光一による摘録版)を讀んでゐる。昭和最初の廿年、巷間の出來事と、断腸亭主人即ち永井荷風個人の行動や思惑の対比を(無責任に)面白がれる。いやわざわざ対比させるまでもなく、偏窟狷介な老人(とは云へ昭和への改元当…

604 カップ酒に就て

カップ酒と云へば、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏の大半は、うんざりした顔つきをするのではないか。ああ、あの安いのが取柄で、旨くも何ともないやつでせう。話題に上げると、詰りその程度なのねと、手厳しく云はれさうでもある。その印象の多くは、ワンカップ…

603 文庫に就て

和語の"フミ ノ クラ"に漢字を宛てたのが"文庫"だから、本來の意味は書庫とか本棚、規模の大きさで云へば図書館に近い。この場合の"フミ"は分野に関らず、文書全般を指すと見ていい。さう考へると、"文庫本"といふ呼び方は、何かをかしい。"フミ ノ クラ"に…

602 玉葱に就て

栽培される野菜として、記録に残る最古の部類に入るのが玉葱である。メソポタミヤの粘土板に"決定版 玉葱レシピ"が記されてゐるさうだ。もう千年ほど遡つて、ファラオがピラミッドを建てさせる時、労働者に配給したといふ記録もあるらしいから、あの辺では馴…

601 壜麦酒に就て

呑み屋のメニュに壜麦酒があると嬉しくなる。多くはアサヒのスーパー・ドライ。時々サッポロの黑ラベルやキリン・ラガー。稀にサッポロ・ラガーこと赤ラベル。サントリーのモルツ系統は殆ど見ない。ヱビスの黑(小壜)を置いてあるお店は一軒だけ知つてゐる。…

600 気樂の代り

GRデジタルⅡが手元にある。 勿論、使つてゐる。 毎日必ず、ではないけれども。 手首を通す式のストラップを附けて、ケイスに入れて、そのケイスにカラビナを附け、鞄やズボンにぶら下げてゐる。便利で宜しい。 この"便利で宜しい"のが、實は見逃してはならな…

599 ピーマンに詰める

中南米を原産とした唐辛子の一族に分類される。唐辛子自体も同じ地域が原産地で、日本には明治期、北米で改良された品種が入つてきたさうである。ピーマンの話。但しその呼び方はフランス語かポルトガル語由來らしい。日本語では西洋唐辛子だの、甘唐辛子だ…

598 充填豆腐閣下

我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には、わたしが莫迦ツ舌の持ち主であるのは、既にご承知の事實かと思ふ。念を押すと謙遜ではない。充填豆腐を旨いうまいと云ふくらゐだもの。 全國豆腐連合会といふ権威ありげなウェブ・サイトの記載を頼りに、充填豆腐の製法を説明…

597 地麦酒カメラ

スマートフォン(のカメラ機能)がコンパクト・デジタル・カメラを駆逐して随分と経つ。ほんの少しの機種が、細々と残つてはゐるが、事實上、絶滅したと云つていい。と書いたらきつと、リコーのGRやソニーのRXがあるぢやあないかと反論が出るだらうが、あの辺…

596 謎めく蒟蒻

嫌ひではないのだが、旨いのかどうか、判りかねる食べものといへば、わたしにとつては蒟蒻である。もつ煮や筑前煮きに入つてゐないと、何となく寂しいのは事實だが、無くて困るかと訊かれたら、さうでもない。我ながらいい加減と思ふが、ここでは我が親愛な…

595 タグチとウエダとウルトラと

期間の限られた公開かも知れない。何とかチューブに、田口清隆が本気で撮るウルトラソフビ特撮だつたか、そんな題名の動画がある。内容は文字通り。田口が三人の子供と一緒に、家で特撮を撮らうといふ企画で、これが中々…いやかなり、面白い。大眞面目で本気…

594 綻ビ咲キ舞ツテ散ル

例によつて曖昧な話から。櫻の語源である。 A.サ+クラ B.サク+ラ に大別される。 A.の"サ"は植物…稲を指すらしい。稲の字には早稲でも判る通り、サ行の音がある。"クラ"は高御座(タカ ミ クラと訓む)の座。神聖なものが宿る場所くらゐの意味か。組合せには納…

593 こだま號に食堂車を

食堂車に乗つたことがない。寝台車はないが、夜行列車はある。かう書くのは少々をかしい。食堂車は意図して乗るのではなく、聯結された車輌に足を運ぶ性質だからで、さう考へると、食堂車を利用したことがないとするのが正しい。 少年の頃、毎年の夏休みに若…

592 たこつながり

ソーセイジの片側に切れ込みを入れて炒めると、皮と肉の収縮が異なつてゐるから、切れ込みを入れた箇所が反り返つて開く。"タコさんウインナー"の名前で知られる飾り切りの一種で考案は尚道子。切つ掛けは判然としないが、家族を喜ばす為だつたらしい。この"…