閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

737 正しい口の使ひ方

最初に念を押すと、中心になるのはごはんである。 白ごはん。 その白ごはんにあはせて嬉しく旨い中華料理(中國料理でなく、日本式に変更されたのも含めて)は何だらうといふ、今回はそんな話。 思ひ浮んだのを順不同で挙げませう。 回鍋肉 青椒肉絲 麻婆豆腐 …

736 三輪の神さま

正しい發音はにゆうめんで、字は煮麺(または入麺)を宛てる。うでた素麺に温かいつゆを張つた汁もので、大和國…奈良、もつと範囲を狭めると、現在の桜井市にあたる三輪が發祥といふ。判らなくもない。素麺が伝はつたのは奈良朝の頃らしく、その所以か、三輪は…

735 無頓着だつた

先日のラヂオで、"けふのお便りテーマ"と題して、"何の海苔巻が好きですか"とやつてゐた。番組で云ふ"海苔巻"はどうやらお寿司の巻きものを指してゐるらしく、さう云へば巻きものの好ききらひに無頓着だつたなあと思つた。 思ひ出すと、(比較的)馴染みがある…

734 アルカイックなスマイル

白身魚(主に鱈の類)のフライと(串切りの)揚げた馬鈴薯をあはせて、フィッシュ・アンド・チップスと呼ぶのだ、といふことを知つたのはいつ頃だつたか。一ぺんか二へん、食べたのは東京だつたから、それより前…卅年以上前…なのは確かである。ギネスと一緒に食…

733 お箸と掻き揚げ

小學校の給食を思ひ出すと、二つだけ、恨みがましい気持ちになる。第一はグリンピースの卵とぢがまつたく、まづかつたこと。未だ記憶に残るくらゐだから、余程と考へてもらつていい。お蔭で今も、グリンピースは苦手にしてゐる。 もうひとつは食器に先割れの…

732 麦酒の友

世の中の酒精の中で、一ばん馴染み深いのは、わたしの場合、麦酒である。初めて呑んだのは、麒麟ラガー・ビールの中壜だつた。断定出來るのは、父親の晩酌で呑ましてもらつたからである。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏もそんな切つ掛けで、麦酒乃至酒精に馴染ん…

731 辛味噌仕立ての一ぱい

寒い時期に限つてゐると念は押すとして、味噌ラーメンを啜りたくなることがある。寒風で冷たくなつた空腹には實に嬉しい。かう云ふと数少い讀者諸嬢諸氏は 「おや丸太はラーメンの格を、えらくひくくしてゐた筈だけれど」 さう笑ふかも知れない。確かにその通…

730 戻るべし

何の雑誌で目にしたか、植田正治が愛用だか常用するカメラに、ペンタックスMZ-3を挙げた記事があつた。ペンタックスの特集號だつたから、その辺りの事情はあつたのだなと思ふが、そこは措く。大事なのは、わたしが植田正治のファンといふことで、その植田が…

729 ニコンの基本形

ニコンと云へば"不変のFマウント"の惹句が聯想される。實のところ、ニコンが自慢するほどの"不変"ではない。粗つぽく云ふと、最初にただのFマウントがあり、Ai、Ai-Sと呼ばれるマニュアル・フォーカス仕様、Ai AFから始まるオート・フォーカス仕様と續く。後…

728 ライカの完成形

ライカの完成形と云へばⅡ型である。 距離を合はしたら、焦点も合ふ。 といふ構造を最初に組み込んだ機種であり、以降はその改善と拡張、または追加と見ても、間違ひにはならない。具体的に挙げませうか。 Ⅲ型はスロー・シャッター、視度調整、ストラップ取附…

727 ざらざら

食事の終りにお茶漬けがあると、まことに結構と云ひたくなる。何がどう結構なのか、そのところを文字にするのは六づかしい。無理に云へば、その食事が綺麗に終つたと感じられるからではないかと思ふ。 めしをお茶…水に浸すのは、相当にふるい食べ方だらう。…

726 小さい樂み

知る範囲で云ふのだが、レンズ交換の出來るデジタル・カメラで一ばん小さなフォーマットは現在、マイクロ・フォーサーズだと思ふ。尤もそのマイクロ・フォーサーズは既に気息奄々、終りに近さうな感じもしなくはない。以前にはもつと小さなフォーマット…ニコ…

725 先祖返り

西洋料理ではなく、洋食だつた筈だと思つて確めたら、矢張り淺草の洋食屋が、明治の頃に始めたらしい。元の名前はミンスト・ミート・カットレット。ミンスト・ミートは挽き肉の意で、そのカットレット。それが訛りに訛つたといふ説がある。この手の食べもの…

724 未完成の歓び

勿論、呑むのが樂みにならない筈はない。併し呑むだけで済ますのは六づかしい。わたしの事情なのだが、麦酒でもお酒でも葡萄酒でも黑糖の焼酎でも、卓に摘みがないのは落ち着かない。呑みに行かうと思つた時に浮ぶのが、摘みの旨い店になるのは、当然の帰結…