2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧
不意に、饂飩について眞面目に考へた事が無いなあと気がついた。家でうがくし、カップ饂飩も食べなくはないし、偶には外でも啜るのに、漠然とああ饂飩だねえと思ふきりである。不眞面目な態度ではなからうか。 四半世紀くらゐ前のわたしは、饂飩と云へば大坂…
尊敬する内田百閒の『御馳走帖』(中公文庫に収められてゐる)に“我が酒歴”といふ一文がある。題名通りの随筆で、陸軍の士官學校で教官を勤めてゐた時期、地蔵横丁の[三勝]といふ高等縄暖簾で、お酒を覚えた頃の一節が記されてある。 お酒はいつも白鶴の一点張…
醍醐とか(乾)酪、蘇とかいふ食べものがある。あつたと云ふべきか。上代日本の乳製品。呼び名がちがふから、別の食べものだつたと思はれるが、どこがどうちがふのか、よく解らない。ミルクとバタとチーズとそれらの中間らしい。中間つて何だと訊かれても、元…
餃子が好きなのだと云ふと、したり顔で、どうせ焼き餃子でせう。本場では水餃子なのですよと知識を披露するひとが出てきさうである。確かに焼き餃子が好物なのは事實で、この稿はさういふ話をする積りでもあるのだが、幾らわたしが無知でも、水餃子が本來…元…
ほつけの漢字は魚ヘンに花…𩸽ださうで、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏はご存知でしたか。わたしは調べて初めて知つた。アイナメ科に含まれ、ホッケとキタノホッケが属する。魚ヘンにも花にもホッケといふ訓みはない。身のほろほろ崩れる様を散る花びらにたとへて…
我われのご先祖は獸肉を食べる習慣を持たなかつた…少くともその習慣を失つた。それは佛教による殺生きらひが大きな原因である、といふ見立てがある。どこまで本当なのか、はつきりしない。三河土豪の頭領が征夷大将軍位に就いて以降、大つぴらに食べなくなつ…
何で目にしたか忘れたけれど、東京は居ながらにして、世界中の美味いものを食べられる都市なのださうである。確かに見た記憶のある看板を順不同に挙げると、フランス、イタリー、ドイツ、イギリス、スペイン、ギリシア、インド、ロシヤ、ハンガリー、スウェ…
先づ画像をご覧頂きたい。 焼き鯖である。 大根おろしがある。 檸檬も添へてある。 沖縄珊瑚麦酒のケルシュを呑んでゐたら、出されたのが、この焼き鯖に大根おろしと檸檬で、出されたといふのは誇張ではない。詰り註文をしたのではなく、附出しであつた。多…
“何々の盛合せ”と聞くと、何となく昂奮する。たとへば天麩羅の盛合せ。或はお刺身の盛合せ。格は多少落ちるが、おでんやチーズ、ソーセイジの盛合せなんていふのもある。旨いもののいいところ取りの感じがして、かういふのは西洋にあるのだらうか。イタリア…
カメラを使ふひとの中には、純正主義者と呼びたくなる志向の持ち主がゐる。特にニコンとライカのユーザに多い気がするのだが、これはこちらの僻目かも知れない。僻目と云ふのは、わたしがその辺りに無頓着だからで、何々のレンズで撮つたと云はれても、さう…
食用としての栽培が日本で始つたのは、明治に入つてからといふから、比較的おそい。それ以前から鑑賞用だつたさうで、何をどう鑑賞してゐたのか。食用の品種が芽を出したのは北海道。今も全國の半分くらゐは道産で、續くのは佐賀産。ちよつと意外でせう。 玉…
卵を二個か三個。 塩と牛乳を少し。 焼き上げは堅め。 といふのが、わたしにとつての玉子焼きで、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏からは、盛大な批判が寄せられさうだが、さういふ玉子焼きに馴染んでゐるのだから、仕方がない。 だから初めてあまい玉子焼きを食べ…
ごはんとお味噌汁。小鉢。お漬物。それから主役になるおかずで纏められたものを、この稿では定食と考へる。従つてきつね饂飩にかやくごはんや、醤油ラーメンと焼き餃子三個と小炒飯、カレーとナンと少々の生野菜とラッシーは、そこから外れる。きつね饂飩と…
二十年とか三十年とかそれくらゐ前、東京から大坂に帰省する時、東海道本線を使つたことがある。当時は早朝に東京を發車する静岡行きの急行列車があつて、それに乗つてみたかつたのが理由である。確か静岡から豊橋を経由して名古屋まで出てから、近鐵の特別…
どこかで見た漫画でラーメンの話だつたが、味噌ラーメンを作るか何かする登場人物に、別の登場人物が止めておけと忠告する場面があつたと記憶してゐる。その忠告をする登場人物が云ふには、味噌はそれ自体が旨いから、ラーメンに使ふとしても獨創性(だつたと…