閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

687 好きな唄の話~オクトーバー・ムーン

月の名を題に含む唄で、一年分を並べられるだらうか。 目覚めのMarch(高野寛) 五月を忘れないで(斉藤由貴) 八月の唄(浜田省吾) September(竹内まりや) November Rain(甲斐よしひろ) 十二月のエイプリル・フール(EPO) 思ひ浮ぶのはこれくらゐで、完成は六づか…

686 好きな唄の話~愛の才能

天才であることは単に六づかしい。 さうあり續けるは更に困難である。 川本真琴のデヴューは本当に驚いた。性をあつけらかんと肯定し…いや正確には、性愛への興味を隠さうとせず、少女と呼ばれる年代から聯想される"無垢"を蹴散らしてもゐた。彼女のデヴュー…

685 好きな唄の話~TOKYO TOWER

廿歳過ぎの頃だから、ざつと卅年余り前のこと。わたしも含めて女も男も混つたグループの中に、Oさんといふ女性…女の子と云つてもいいか、兎に角、Oさんがゐた。期待されては困るから先に云ふと、彼女とは何ひとつ、なかつた。いやそれは不正確で、たつたひと…

684 スパゲッティ・アル・パロディ

伊丹十三の『ヨーロッパ退屈日記』に[スパゲッティの正しい調理法]といふ一文がある。"正しい"が實に力強いね。伊丹が云ふには、イタリーのスパゲッティを手に買ひ、大きな鍋で沸かした湯(沸騰する寸前に塩をひとつかみ。伊丹の代りに云へば、ひとつまみでは…

683 これも叉、昔の話

これも昔の話であるとは、吉田健一の『東北本線』の冒頭で、短篇小説と呼んでいいのか、どうも判らない。随筆のやうでもあるが、架空と思しき人物(モデルとなつたたれかがゐるのか知ら)が登場し、抽象的なのか知的なのか、豚革の鞄から取り出したヰスキィと…

682 仄かに澱む鍋焼き饂飩

滅多には無いが、鍋焼き饂飩を食べたくなる時がある。 何でせうね、あの感じは。 鍋焼き饂飩が目の前にあるとして、或は目の前にあると想像して、不思議なことに、お酒を求める気分にはならない。もつと云ふと酢のものや白身魚の煮つけは勿論、ごはんも慾し…

681 誕生日について

生きてゐる以上、年に一ぺん、必ず訪れるのが誕生日である。閏年の如月晦日生れが、どんな扱ひになるのかは知らない。如月念八日なのか、それとも彌生朔日か。そもそも戸籍の上で、二月廿九日生になつてゐるひとつて、どれくらゐの数なのか知ら。 かういふ話…

680 何とはなしの麻婆豆腐

美味しいとは思ふのだが、何とはなし、食べる機会を持てない食べもののひとつに、麻婆豆腐がある。 豆腐と挽き肉を炒め煮て、唐辛子と花椒、豆板醤などで味を調へた四川の料理。我が國での受容は、陳建民が日本風に味附けを工夫してからで、ざつと半世紀ほど…

679 点灯は順繰りに

この稿を公にする今日は月の半ばも過ぎてゐる筈だが、書き出したのは令和三年の長月晦日で、翌神無月朔日に、半歳續いた緊急事態宣言が解除される運び、その辺りなので我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には、頭の時間を半月ほど、戻しておいてもらひたい。 緊急事態…

678 未ダ定マラズ

この稿を書いてゐる時点では何も決つてゐないけれど、ちよつとした遊びの話が出てきた。出不精なわたしですら浮足立つた気分になつて、自覚の無いストレスのやうなものが溜つてゐたのか知らと思ふ。具体的なことは"未ダ定マラズ"だから触れない。但し触れて…

677 ワクチン記(余話)

小便の話で終らすのも何だし、折角でもあるから、もう少し續けませう。 廿三日廿四日はすつかり平熱。体の芯に熱が残る感じはしたが、勘違ひの可能性も少からずある。 副反応は予想してゐた通りに起き、覚悟してゐたほど酷くも長くもなかつた。個人差が大き…

676 カレー・ライスの肉を論ず

カレー・ライスには獸肉が欠かせない。 魚介のカレー・ライスも旨いよといふ聲も聞こえなくはないし、一概にまづいと云ひもしないが、シー・フードの穏やかと繊細はカレー・ライスの力強さ、圧力には些か物足りなさを感じざるを得ない。 牛肉。豚肉。鶏肉。…

675 二度目とその後~ワクチン記(終)

九月廿日(月) 晴れ。 雨は兎も角、ひどい蒸し暑さが我慢ならなかつた前週末十八日と、何故だか右膝が痛くて堪らなかつた十九日を経て、二回目のモデルナ摂取当日。 飲むゼリーもレトルトのお粥もスポーツ・ドリンクも万全だし、チョコレイトやカップ麺も買つ…

674 さくとざくの間

さくりさくりが天麩羅。 ざくざくざくがフライ。 擬音で云ふとそんなちがひだと思ふ。 どちらもディープ・フライ…たつぷりの油で揚げる点は共通してゐるのに、どこでちがひが出るのかと思つて、ざつと調べてみたら、要するに衣が異なるかららしい。 天麩羅は…

673 赤身

スズキ目サバ科マグロ属に分類されるさうで、詰り鯖や鰆の遠縁、鰹の親族で…鮪の話ですよ。鮪の字はサカナ偏に有ルと分解出來て、日本かつお・まぐろ漁業協同組合が運営する[かつお・まぐろぽーたる]によると、有に含まれる月が眼目らしく、月の字の源は肉と…