閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

960 白と黑

 画像は過日、足を運んだ小さな呑み屋で、店長が

 「信濃に行つてきたんで、お土産です」

と出してくれた山菜…確かこごみだつたかな。おまじなひ程度の辣油で味をつけてあり、酎ハイに中々似合つた。

 (かういふのを悦べるまでに到つたのは、小父さんになつた證だなあ)

 かろく醉つて…本当ですよ…帰宅した翌日、画像を見直すと、どうも詰らない。記録だから、詰つても詰らなくても、どうといふこともないのに、何となく気になつた。

 それでトリミングをして、白黑に変換して、エフェクトを掛けた。尤もらしい感じになつたと思ふ。

 「それは併し、冩眞だらうか」

さう疑義が呈されるかも知れず、その疑義に就ては私も同意したい。だから画像と書いてゐる。

 とは云へ思ふのは、意図的に撮るなら兎も角、カラーの画像を白黑に転じさせると、それだけで(一種の)尤もらしさが滲んでくる。有り体に云ふなら、その尤もらしさが、實はただの勘違ひといふのは念を押すまでもないとして、ちらつと目にする程度のひとの、何割かは騙せさうである。残るのはその何割かに、撮つた本人である筈の自分まで含まれかねないことで、かういふのは矢張り、ぬけぬけとやつてのけるくらゐの図々しさを持たないと、扱ひが六つかしいみたいだ。