閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1073 GRデジタルⅡを呑み屋に聯れて

 ワイド・コンヴァータを附けたGRデジタルⅡを持ち出し、ふらふらと何枚か撮つたその足で、馴染んだ呑み屋に潜り込んだ。先客は小父さんのふたり組。受け皿に置かれたコップが目に入つた。既に冷酒をきこしめてゐると判つた。こちらはホッピーの黑。お摘みは少し考へてから、玉子焼き(大根おろし添へ。明太マヨネィーズ添へも撰べるけれど、私は必ず大根おろしにする)と鶏皮ぽん酢を註文した。

 ホッピーを呑み、卓に置いたGRデジタルⅡを眺める。中々に恰好よろしい。贔屓目なのは承知してゐるが、かういふ時に贔屓目以外の感想が浮ぶものではない。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏だつて、その辺りの感覚はきつと同じにちがひないと思つてゐたら、鶏皮ぽん酢が供された。特段の美味でもない筈なのに、何となく註文してしまふのは、口に適ふからなんだらうな、きつと。

 玉子焼きがきたのにあはせて、ホッピーの中を頼んだ。いつの間にやら、隣席に新しいお客が坐つてゐた。目礼したら店の大将が、御存知でせうと聲を掛けてきた。私と新來さんのどちらに向つてかは知らないが、それでお互ひ、相手をここで見たことがあると認識しあつた。

 「お顔は存じ上げてゐましたが」

 「お話しするのは初めてですね」

礼儀正しい挨拶を交してから、暫く實の無い話…新來さんが聯れて行かれた呑み屋、互ひの入院の経験、その他諸々…をした。この辺りで、醉つての失敗を怖れ、GRデジタルⅡをバッグに収めた。我ながら冷静である。追加したホッピーの中も干した後、串焼き(ハラミの塩と葱を各二本)と焼酎ハイを註文した。新來さんは[出羽櫻]だつたと思ふ。すつかり平らげて、おやすみを云つた。バッグの中のGRデジタルⅡに目を落し、肴になるカメラは有難いと思つた。