閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

1123 冷静

暫く、呑んでゐない。 呑み屋に足を運んでゐない、程度の意味。 あまりに暑いから、外に出るのは控へ、止む事を得ず、出掛けたとしても、用件が終り次第、速やかに帰宅する生活だもの、当然の結果である。 陋屋では、呑みますよ…罐麦酒の二本か三本を、呑む…

1122 スタイリング

リコーのGRⅢを、常用してゐると、何度も書いた。 主に物慾の面から、色々と触れた。 小さくてかるくて、よく冩る…といふことを考へ、考へ續けた結果が、GRⅢであつた。 持ち出すのに、苦痛でなければ、不便でもないサイズとスタイリング。 普段使ひだつたら十…

1121 烏賊フライ

洋食と聞けば、ハンバーグやポークソテーやクリームコロッケ、海老フライが浮ぶ。まあ順当なところでせう。 ではそこに、烏賊フライを加へるのは、どうだらうか。 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏なら、きつと双手を挙げてくれると思ひつつ、烏賊のフライは洋食の…

1120 冷や汁

尊敬する檀一雄は"ヒヤツ汁"と記し、"ヒヤツチル"と訓ませてゐた。舌触りのある書き方とは、かういふことなのかと思ふが、この稿では冷や汁で通します。雑に云へば 焼いた白身魚の身を摺る。 その魚の頭や骨で出汁を取る。 お味噌を焼き、摺つた魚肉と胡麻を…

1119 劃期

ニコンのフラグシップ機で、劃期と呼んでいいのは、F4だと思ふ。もしかすると、Fマウントを使ひきれる、唯一の銀塩ニコンかも知れない。 ごく簡単に云つて、初代から先代までの三機に、自動焦点と、自動巻き上げを追加したのが、F4だつた。液晶パネルは乗せ…

1118 微視

被冩体に近寄つて撮れるレンズをマクロ(レンズ)と呼ぶ。但しニッコールだけはマイクロと称してゐて、たれの本だつたか、前者に巨視的、後者には微視的の字をあててあつた。うまいものだと感心した。 近くに寄つて冩せるレンズが重視されたそもそもは、複冩と…

1117 煮か焼きか炒めか

先日、尊敬する檀一雄の『檀流クッキング』の頁を、ぱらぱら捲つてゐると、韮玉の文字が、目に飛び込んできたんです。昂奮を感じましたねえ。何となく、だけれど。 檀が書いたのは、韮を強火でしんなりする程度に炒めて、卵を二つ三つ溶き入れ、半熟より少し…

1116 見知らぬ言葉からの聯想

巷間の新語や流行語にはまつたく疎い。 といふより、殆ど知らない。 だから"町中華"の文字を目にした時は、一体なんだと思つた。文脈を見るに、町中にあり、チェーン店ではない、ラーメンは勿論、定食や一品ものも充實した、麦酒だけでなく、焼酎ハイなぞも…

1115 安定好みお馴染み好み

葱と大蒜、ハラミは二本。 串焼きでは一番、安心出來る組合せではないかと思ふ。ハラミの一本を、鶏皮やレヴァやタン、或はササミにする手はあり、大蒜を獅子唐にすることもあるが、後者は兎も角、前者は焼き手の技倆次第の部分が大きい。従つて安定感に欠け…

1114 高々百円精々二百円

上段は玉葱フライ。 下段が串かつ。 画像はどちらもウスター・ソースだが、ソース抜きで味つけぽん酢や醤油でやつつけられもする。 空腹をかろく感じる時、そのかろさの具合で、本数の調整が出來るから、串揚げは中々に有難い。串かつを二本にしていいし、烏…

1113 焼酎ハイに就て

甲類の焼酎をソーダで割つた飲みもの、と解釈してゐる。呑み屋の品書きでは、チューハイ表記が多いんではなからうか。まこと無愛想。冷たいのと炭酸の快さだけで呑ませる一ぱいだと思ふ。併しその冷たさと炭酸の快さが、好もしく感じられるのも、一方の事實……

1112 夏の麦酒に就て

尊敬する内田百閒は麦酒が大好きなひとだつた。何でも祖母から、訓戒として、一人前になるまでお酒…ここでは日本酒の意…を呑んではいけませんと云はれたから、代りに麦酒を覚えたのだといふ。簡単に註釈を附けると、内田家は元々造り酒屋だつたが、父親の代…

1111 素麺に就て

夏といへば素麺で、素麺といへば、『檀流クッキング』の藥味のくだりを思ひだす。ちつと長くなりますが、引用しますよ。 薬味のサラシネギは誰でもつくる。ゴマを煎って、叩きゴマか、半ずりのゴマにしておくならば、薬味は二品ということになるだろう。 い…

1110 本の話~大人の参考書

『東京煮込み横丁評判記』 坂崎重盛/光文社知恵の森文庫 うまい煮込みのある店はいい呑み屋。 いい呑み屋がある町は愛おしい町。 と考へる筆者が、東京の主に東側を呑み歩きながら書いた一冊。呑み歩き、且つ書いた時期は平成十八年から廿年にかけて(文庫化…

1109 夢想の切符

驛賣のお辨當を略して驛辨なのだと思つてゐたが、驛辨は驛辨であるらしい。白バイの正式な名称が白バイなのと同じである。併し驛賣のお辨當だから驛辨なのも間違ひない。ぢやあその驛はどこだと云へば、明治十八年の宇都宮驛と云はれてゐます。驛賣の視点で…