閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1040 相対的

 腹身の字を宛てると思つてゐた。

 念の為に確めると横隔膜だつた。

 間違つてゐた。

 牛一頭から取れる量は少いらしい。どの程度の少さかは知らないけれど、私が好んで食べられるのだから、稀少とは呼べまい。肉牛の巨体を思ふに、他の部分に較べたら、相対的に少いだけではなからうか。

 串焼きなら一本百円から百五十円くらゐ。

 うむ矢張り稀少部位の値段ではないなあ。

 とは云へ、稀少価値と旨いかどうかは別枠の話。旨いを口にあふか否かに置き換へてもそこは変らず…要するに私はハラミを大きに好む。旨いからね。

 適当に脂つこく。

 適当に硬く。

 適当に軟らかくもある。

 鶏の唐揚げとポテトサラドともつ煮で腹を満たし、もうちつと食べたい時に、串で二本のハラミを追加するのは、まつたくのところ、惡くない撰択である。私は塩を喜ぶが、たれも(店によつては味噌も叉)宜しい。麦酒でよく、焼酎ハイにも似合ふ。

 何より串二本くらゐなら、多くも少くもない。さう思つてハラミを見ると、他の串焼きに較べ、肉がやや小振りに感じられなくもない。これが詰り、相対的な少さといふことか。