念の為に確めたら、平成四年のメジャー・デヴュー、且つ最初のシングルと知つて驚いた。女性だけで構成されたラテン・ビッグ・バンドの先駆け…といふより、令和の今に到るまで、殆ど唯一の存在ではあるまいか。
捨てられることを悟つた女が、過ぎた日々(長かつたのだらうか)を思ひ浮べながら、先手を打つて男に別れ…戀の終りを告げる唄。
こんな風に書くと、哀しく重く、切々と唄ひあげてゐさうにも思へるが、實際はあくまでもかろやかで明るく、哀切はその中に忍ばせてゐる。それは(昭和の)小父さんが好みさうな、悲戀に耐へる健気な女といふより、自立した女…我ながら、厭みな云ひ方だなあ…が、すつと背筋を伸ばした感じ。思ひではその背骨に詰め込まれている。
かういふ唄は、日本の流行歌の文法では、きつと成り立たないと云つていい。