閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1094 ハムでもう一ぱい

 考へてみたら、ハムを摘みに呑む機會は滅多に持たない。

 ハムカツならお馴染みなのに。

 ソーセイジだつて喜ばしいのに。

 第一ハム自体、朝の食べもの…麺麭に挟んだり、目玉焼きにあはしたり…のやうに思はれる。

 久々に立ち寄つた酒保で、[まんこい]の水割りを呑んだ某夜のつき出しがハムだつた。へへえと思ひつつ摘んだら、實にうまかつた。添へられたチリー・ソース(ガーリック)を、二滴か三滴振ると、風味が増した。嬉しくなつてきた。お代りを呑まうと思ひ、[カリー春雨]の有無を訊ねると、ありますよとの返事だつたから、水割りを註文した。

 泡盛を味はひ、叉ハムと焼酎泡盛は出合ひものなのは何故だらうと不思議になつた。思ふに薩摩奄美琉球辺りは、肉食への禁忌感覚がうすく、焼酎一族と相携へ、我が國では珍しい組合せを、練り上げるに到つたのか知ら。南國の酒肴史に就て私の知るところは皆無だから、いい加減な想像である。併し豚の角煮もポーク玉子も、お酒にはあはしにくいが、焼酎や泡盛に似合ふのだ。明後日の方向の想像とは云はれまい。

 お勘定を済まして外に出てから、同じ蒸溜酒族のヰスキィやウォトカと、ハムの相性は何うだらうと気になつた。あすこには[マルス]がある。次の機會に試さうと思つたが、次のつき出しにハムが供される保證はどこにもない。