閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

566 好きな唄の話~Bomber Girl

 織田哲郎は濃い。
 近藤房之助も濃い。
 その組合せでBomberなGirlである。膏のごつてりした獸肉を、馬鈴薯と玉葱と大蒜で、巨きな鍋でごつてり煮込んだやうに濃厚であるにちがひない。

 さう思ふでせう。
 その通りである。

 無茶なことをしやがる。
 さう思ひながら、そのごつてりを味はふと、これが旨いからこまる。いや困ると云へば失礼で、ロック・ン・ロールとブルーズが、ポップスを仲立ちに、鮮やかな共演を果してゐるのだから、第一級の煮込み料理だと云つていい。

 併し(しつこいが)無茶をしたものだと思ふ。わたしなら織田と近藤の組合せを提案されても
 「纏まる筈、ないよ」
きつと却下するだらう。プロデュースの才能はどうやら、諦めなくてはなるまい。

 要するに、恰好いい。
 兎に角恰好いいのだ。
 どんな唄だと云はれたら、さう応じる。聴いたことがあつてさう質問するのなら、そのひとはこの唄と相性が惡い。それはそれで仕方がない。

 ティム・バートン版の『バットマン』ではマイケル・キートンとジャック・ニコルスンが共演したでせう。濃い組合せである。わたしは大好きな映画だが、あはないひとは、とことんあはないと思ふ。この映画は後日、"曖昧映画館"で取り上げたいから詳しく触れないとして、あの"わざとらしさ"を嫌ふひとは少からずゐるにちがひない。但しその"わざとらしさ"は
 「ぬけぬけと、まあ」
といふ呆れた気分に近しく、その気分はこの唄からも濃厚に感じられる。繰返すが、織田哲郎近藤房之助、BomberにGirlですよ。
 濃密。
 能天気。
 花やか。
 その全部をぬけぬけと、然も恰好よく…上記の『バットマン』で、ジョーカーが暴れまはるやうに…揃へてあるのがこの唄で、そんな時はどうするのか。決つてゐる。おれたちもぬけぬけと、ステップを踏めばいい。