閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

884 ゆつくりの話

 前回、GRⅢを買つたことを書いた。その時にストラップやケイスが慾しいとも書いた。それで[ワイカメラ]に足を運んでみた。無かつた。

 無いと云ふのは、わたし好みのが見つからなかつた、の意味であつて、[ワイカメラ]の品揃へがどうかうなのとは異つてゐることは念を押しておく。

 それは兎も角、こまつた。わたしは純正品至上主義者ではない。用品メーカが出してゐる、廉で實用的で地味で、赤がちよいと、あしらはれてゐればよかつたのに、さういふのは商ひにならないのか知ら。

 

 ハクバやエツミ

 NATIONAL GEOGRAPHIC

 TEMBA

 f64

 ColemanにOUTDOOR

 

 その他諸々、手に取り眺めたけれど、どうにもしつくりこなかつたのは不思議なくらゐで

 (おれはそんなに神経質なのかなあ)

不安になり、不安を感じつつ、そんなら何故しつくりこないのかと考へた。

 

 形や大きさ。

 手触り、色あひ。

 ストラップなら長さ硬さ。

 ケイスなら中の構造。

 

 さういふ條件の綜合があり、多少の妥協はしてもいいかと思つても、その妥協に対して今度は値段が折合はない。ひよつとして神経質ではなく、せせこましいのだらうか。併し当り前に持ち歩くGRⅢを入れ、或はそこに取り附ける物の見た目や手触りが気に入らなかつたら、持ち歩かうとも思ひにくくなる。好もしくない。

 

 家のがらくた函にある物を使ふ手はある。そこは認めるのだが、折角のGRⅢだもの、ちよいと奢りたい気分があるのも事實で、非常に悩ましい。

 もうひとつ。カメラの用品にこだはる必要はなからうとも考へられる。唐草模様の小さな風呂敷や巾着袋に包むのは、惡い趣味ではあるまい。速冩性はごつそり削られるけれど、こちらは速冩性を重視しない。だから支障は出ない。尤もさういふ商品があるとして、どこで手に入るのかが判らないといふ問題は残る。矢張り悩ましい。

 

 ここで裏を返すと、[ワイカメラ]に足を運んで商品を手に取つただけでなく、Webであれやこれやの情報…九割以上は宣伝も兼ねてゐたのは、この際目を瞑らう…を調べるのは樂みでもある。正確を期せばかういふ過程を通じて

 「GRⅢが自分のものになつてゆく」

ことが樂みなので、かう云ふと眞面目な冩眞愛好家は、きつと眉を顰めるにちがひない。

 ちやんと撮り玉へよ。

 といふ咜責乃至忠告は(一応のところ)御尤もとして、併しさうではないカメラの樂みがあつても構はないでせう。多少の時間は掛つても、納得のゆくアクセサリを揃へてから、おもむろに腰を上げるのが、わたしには似合ひの態度である。