閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

883 GRⅢがやつてきた話

 もつと気持ちを落ち着かせた後、書く方がいいのは解つてゐる。併しさうもゆかない。何故なら外題のとほり、GRⅢがやつと手元に來た!からで、"!"を附けたくなる程度にわたしは昂奮してゐる。中々手に入れる機會に恵れなかつた。お財布の事情がひとつ。お財布の事情が片附いた時には、在庫切れが續いたのがもうひとつ。その機會が整つたので、買はうと決めたわけである。

 事前に在庫があるのを確め、[エフカメラ店]に行つた。それから改めて店員さんに在庫の有無を訊いて、ぢやあ買ひますと云つた。本体、予備の電池、それから充電器の三点で、総計は十二万九千と飛んで五円。多少の厭みは含めつつ

 「いつも"お取り寄せ"でしたな」

 「入荷しては直ぐ賣れて仕舞ふんです」

さう返されたから、いい気分になつた。我がGRⅢの人気は変らないらしい。

 併しわたしにしては大変な金額なのに、案外なくらゐあつさり、紙袋が手渡されたので、些か複雑な気分になつた。恭しくお盆に乗せろとまでは云はないにしても、ちよつとした儀式くらゐあつてもよかつたのに。それともライカニコンと較べたらただみたいだから、儀式は省略されたのか知ら。それでGRⅢの値うちか下がるわけではないんだけれど。

 祝盃にオリオン・ビールを呑んで帰宅した。

 函を開けて中を見る。先づ保證書があり、その下に分厚い取扱説明書が何故だか緩衝材にくるまれてゐる。中仕切りを持ち上げると、本体と附属品の電池、手首をとほすストラップ。更にその下には本体に附ける方式の充電ケイブル。無愛想だなあと思ひ、その無愛想がGRⅢなのだとも思ふ。

 同梱のストラップを附けて充電を始めつつ、GRデジタルⅡを並べると、横幅はほぼ同じ。高さと厚みはGRⅢの方があるが、GRデジタル用のケイスに入るくらゐで、大して気にならない。上を見ると、電源スイッチ、シャッター・ボタン、ダイヤルの配置は変らない。背面のボタン類も似た構成になつてゐる。GRはかうでなくちやあ、いけません。

 充電の完了を待ちながら、買ひ足りないものを考へた。先づメディア。それからケイス。リコー謹製のは革製だから気に入らない。かつちりした帆布、ベルト通しがあつて、カラビナ・フックが使へるやつ。液晶の保護フヰルムはどうだらう。必要にも思へるが、今は保留しておかう。後はストラップも慾しい。長いのと短いの。凝つたのは要らないけれど、こちらもしつかりした帆布製が望ましい。

 取扱説明書をぱらぱら捲ると、タッチ式で操作出來ると書いてあつたから驚いて、ここは無効化すると決めた。各種の設定は色々と細やかに弄れる。余りややこしくはしないとして、かういふ下準備が樂いのは云ふまでもない。ここから使ひ勝手をじつくり詰めてゆかう。麦酒のいい摘みになるのは間違ひない。