閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

897 GRⅢxもあつた

 GRⅢに就てあれやこれやと書いた以上、GRⅢxにも触れざるを得ない。カメラの造りとしては、GRⅢと(ほゞ)同じと云つてよく、ちがひはライカ判換算で40ミリ相当のレンズ…標準的な画角…を採用した点にある。

 ざつとWebで見た限り、評判は宜しい。平凡と云へば平凡な画角だが、使ひ方次第で、広角的にも狭角的にも使へるから、"万能の画角"…チヨンチヨンの括弧を附けるのは、万能を信じてゐないからである…と云へなくもない。

 併し慾しいかと訊かれたら首を捻る。

 他の機種なら躊躇ひなく、応とこたへるとも思ふ。GRの系譜は派生機種を除くと28ミリが基本であつて、私はGRにさういふ使ひ方を教はつた。思ひ切つて云ふと、それは"私の標準的な画角"でもある。

 GRで今さら、ライカ判の標準画角を使へるものか。

 さういふ気分はある。

 一方で目を瞑りにくい気分もある。

 GRⅢとGRⅢxを使ひ分けたら訳知り顔を気取れるし、きつと恰好もいいだらう…と思ふ。とは思ふが、そもそもGRⅢとGRⅢxを使ひ分ける器量が私にあるものか、甚だ怪しい上に自信も持てない。序でに二台を同時に持ち出すとしたら、荷物が増えるのもこまる。

 ハラミ…大根おろしが添へてある…を摘みにハイボールを呑みながら、さういふことを考へ…何かをかしい。三秒後、げんにおれはGRⅢと一緒に、GRデジタルⅡを持ち出してゐる、と気がついた。だつたらそのGRデジタルⅡをGRⅢxに置換へるだつて、方法としてはありとも云へる。

 

 (念を押すと上は、GRⅢとGRデジタルⅡの画角が同じといふ條件、後者への私的な思ひ入れを別にして成り立つのであつて、實際はそこまで単純には云ひにくく、そもそもGRⅢx自体、気らくに贖へる値段でないのも大きいけれど)

 

 まあそれは兎も角、たつた今はGRⅢをじつくり使ひこむのが先決である。xに就ては後から迷へばいいことに疑ひの余地は無い。ハラミを咬みつつ、さう思つた。