閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

912 好きな唄の話~VoltesⅤ no Uta

 『超電磁マシーン ボルテスⅤ』といふアニメイションがあつた。フィリピンに輸出され、絶大な人気を誇つたといふ。後年、主題歌を唄つた堀江美都子さんが同國を訪れた際には、"丸で國賓のやうな"歓迎を受けたさうだから、ある世代以上の年齢層にとつて、強い思ひ入れがあるのだらう。

 

 フィリピンで、そのボルテスを『VoltesⅤ LEGACY』のタイトルで實冩化すると聞いた時は驚いた。本気かと思つた。ボルテスのデザインや出演者、プロモーション用の映像を見た。思ひきり本気だつた。

 この稿を書いてゐる今、フィリピンでは放送が始つてゐると思ふ。月曜日から金曜日の毎日、一話四十分、全八十話。本家より長いが、どうやら原典を忠實に、併しじつくり描く方針なのは明かで、成る程、"LEGACY"である。日本でも放送しないか知ら。待つてゐますよ。

 

 さてその"LEGACY"の主題歌が『VoltesⅤ no Uta』で、日本語に訳すと『ボルテスⅤの歌』…訳になつてゐない、といふより、そのままである。驚く勿れ、堀江さんが歌つた詞そのままを、女性の歌手…ジュリー・アンさんといふ方らしい…が歌つてゐる。機材が新しい分、音は新しくなつてはゐるが、"現代風の"アレンジメントは極力控へられ、原典に忠實であらうとしてゐる。私なぞは、"Song of Voltes"くらゐの題で、元の歌詞を英語なりタガログ語なり、訳をあててもかまはないでせうと思ふのだが、監督だかプロデューサーだかは、それだと

 「唄の魔力が失せてしまふ」

と考へたさうだから、ここまで徹底されると、ボルテスの先進國に敬礼を捧げねばならない。残るのはミッチ堀江とジュリーのデュエットで、その時この唄は、"LEGACY"から"LEGEND"へと変貌を遂げる。