閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

955 サブカメラ(前)空想的な

 サブカメラ、と呼ばれるカメラがある、らしい。

 どんなカメラがさうなるのかは、よく判らない。

 昔は…と遠くを見ても許される程度に、齢を重ねてゐるのですよ、私は…ライカをメインで使ふひとが、偶に撮る望遠や近接の為に、一眼レフを持つことがあつた。或はメインの一台が不調をきたした時に備へ、持つておくひともゐた。

 要するに、はつきりした目的があり、それを補ふことで成り立つのがサブカメラなので、最新のフラグシップ機でも、投賣りのワゴンから掘り出した型遅れのコンパクト機でも、別に構はない。理窟の上では。

 ところで私がメインで使ふのがGRⅢなのは、この手帖でも既に何度か触れてゐる。搭載されてゐるミディアムな広角レンズは近接にも強く、クロップを用ゐれば、もう少し狭い画角にも対応出來る。かるいし、動作はスムースで、撮れる画像にも文句は無い。文句が無い以上、GRⅢにサブカメラは必要ないことになる。理窟の上では。

 さてそこで、仮に…あくまでも仮の話として、GRⅢにサブカメラを用意するとしたら、どんな目的の為で、 また何を撰ぶだらう。

 GRⅢに用意されてゐないのは、ズーム・レンズと可動式の液晶モニタである。両方またはどちらかを採つた機種なら、(便利な)サブカメラになりさうな気がする。併しどこで使ふのか。考へられるのは、小旅行の記念乃至記録の冩眞だが、何が何でも使ふだらうか、と疑念は残る。ズーム・レンズ或はズーム・レンズ附きの機種は、何かの弾みに慾しくなり、うつかり贖つてもしまふけれど、じつくり使ひこんだ試しがない。よつてこの方向での撰択は無理がある。

 ならばもう一台、GRⅢを買ふ撰択はどうか知ら。詰りバックアップ。使ひ勝手は同じだから、戸惑はなくても済むのがよい。或は細かい設定を異ならした併用…たとへばカラーとモノクローム…も出來る。その設定を様々に弄り、また登録して使ひ分けをするのが、GRⅢの樂みでせうとの指摘に正しさは認めるけれど、一台をモノクローム且つスクウェア専用にして、もう一台を"それ以外"の設定で、自在に使ふ方法も考へられなくはない。この場合、二台目のGRⅢをサブカメラと呼ぶのは六つかしいけれども。

 ここまで書いて、手元にはGRデジタルⅡがあるぢやあないかと、気がついた。インタフェイスはGRⅢとほぼ変らず、上に書いたやうな、バックアップにも適してゐるし(GRデジタルⅡは、いざといふ時に乾電池を使へる一点で、GRⅢに勝つてゐる)、また併用にも無理が生じにくい。併用するなら、動作のスムースさを鑑み、GRデジタルⅡを単目的的に使ふのが合理的な筈で…かう考へるとなんだかすつきり収まつたなあ。かういふ空想を進めると、次の物慾に繋がるのが私の常だから、何となく落ち着かないところもあるが、それはまあ仕方がない。