閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1028 曖昧映画館~マジンガーZ Infinity

 記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。

 

 『マジンガーZ』は子供の頃、夢中だつた。ひとが乗つて操縦するのだから、玩具を持つてそれを、ぼくが操つてゐるんだと思ひこめ、それは仮面ライダーウルトラマンの変身と、一味ちがふ感覚だつた。

 そのマジンガーを、(改めて)映画にすると耳にしたのは、いつだつたか。無茶をするなあと思つた。ロボット・アニメイションといふ素材は兎も角、今からマジンガーを登場さして、大丈夫なのか知ら。

 

 観た。

 面白かつた。

 

 永井豪が得意なお色気とおふざけや、ボス(漫画版によると、"本当の名前は作者も知らない")と子分の活躍、ボスボロットの奮闘、あしゆら男爵とブロッケン伯爵の内輪揉め、おつぱいミサイルの發射と、お馴染みの場面をきつちり見せ、マジンガーの無双つぷり、グレートとのWマジンガーをカツコよく描いてあつた。無数に現れる機械獸も叉、こつてりした惡役味がいい。数を恃んだところを、返り討ちにされるのは、東映が得意とする時代劇的な約束事で、正義と平和を守るスーパーロボットの戰ひは、かくあらねばならない。

 

 幾つかの不満はあるけれど、細かな点をあげつらふ積りはない。たつたひとつ、さやかさんがアフロダイAで出撃し、甲児くんのマジンガー、それからボスボロットと共闘する場面は慾しかつた。さやかそんの本作での位置附けから、無理と判断したのだらうが、ファンとしては残念だなあと云はざるを得ない。とは云へ、二時間足らずを存分に樂んだのは間違ひなく、製作陣に数寄者…オリジナルへの敬意を忘れない人びと…が揃つてゐたのは、疑念の余地がない。まつたくよく出來たまんが映画といふべきで、その原動力は、光子力エネルギーだつたかも知れないと、私はすすどく睨んでゐる。