閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1045 噂と期待

 近年どうも慾しいカメラやレンズが無くなつてきた。手持ちのGRⅢがあれば、大体は何とかなりさうで、枯れてきたと笑はれても、止む事を得ない。併し例外がひとつあつて、令和六年夏の發賣を目指してゐるらしい、ペンタックスのフヰルムカメラがそれに当り…まだ噂しか流れてゐない。

 

 巻き上げはレヴァ、巻き戻しはクランクの手動式。

 フォーマットはハーフサイズ。

 レンズはゾーンフォーカス。

 自動露光は出來るらしいが、プログラム露光が採用されるかは、判然としない。

 レンズに就てはまつたく不明。

 外装の素材も同じく不明。

 従つて幾らくらゐになるのか、見当もつかない。洩れ聞く情報が正しければ、銀塩カメラ末期に流行した、"高級コンパクト"のやうな値段にはならないだらう。

 

 ハーフサイズとは、うまい落しどころを見つけたと思ふ。現代のフヰルム(生き残りは数少い)と、現代のレンズの組合せなら、冩りの心配は要らないし、ランニング・コストも抑へられる。この点は重要に思はれて、フヰルムの供給から現像、プリントに到る工程を、どう確保し、運用するんだらうと、不安は残るが、そこは考へてゐるだらうとする。それとカメラの大きさが、フォーマットに比例する事を考へるに、筐体のコンパクト化に有効でもある。ペンタックス銘のハーフサイズ機は、(出るとすれば)初めてとなるけれど、お手本(のひとつ)にリコーハーフはあるだらうなと思へて、詰りスタイリングが樂みになる。

 

 序でだから、期待と妄想を挙げておく。

 情報が正しいなら、気らくなスナップを前提にした機種になると思はれる。であればレンズは、ライカ判で卅五ミリ相当がいい。明るさは求めない。その代り、隅までシャープに冩るのを望みたい。

 アクセサリは多いに越したことはない。尤もあれこれ用意するのは無理かと思ふ。なので汎用品を使ひ易くしてもらひたい。単体の距離計を用意したら、洒落つ気があると思ふのだが、ペンタックスもリコーも、その伝統を持たない。流石に實現は六つかしいか。

 筐体に金属は求めない。但しプラスチック感丸出しだと、がつかりするのは確實でもある。この辺りは、リコーの一眼レフが、中々巧妙な扱ひだつたと記憶してゐるから、参考にするのではなからうか。ペンタックスの目的のひとつに

 「銀塩カメラを造る技術を残す」

ことがある筈だから、自社他社関係なく、参考になる機種はどんどん見て、構造や機構を取り入れてもらひたい。それらから手にしたユニークで合理的、そして軽快なスタイリングと、ペンタックスが得意とする、カラー・ヴァリエイションに期待したいと思ふ。