閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

151 折合ひ

 偶にマーケットでお弁当を買ふ。簡単な食事の準備すら面倒で、飲み屋に行く気分でもない時。併し罐麦酒は飲むので、たとへばにぎり鮨なんていふのは買はない。おかずがつまみを兼ねるのだから、当然の判断である。

 だから大体は幕の内弁当的なのを撰ぶ。何とかの和風弁当とか、そんな名前のやつ。季節によつては炊き込みご飯になつてゐる。後は鮭か鰤か鯖を焼いたのに金平牛蒡、玉子焼き、厚揚げや蒟蒻を焚いたの、佃煮くらゐか。廉なのだつたら、魚の代りに竹輪の天麩羅が鎮座するし、かんとかの洋風弁当なら、白身魚のフライかコロッケが登場する。

 まあ、値段なりの味。

 なので文句は云はない。

 それに運がいいと、二割引きとか三割引きで買へると思へば、下手に手間を掛ける自炊より安上りで済むかも知れない。いや流石にそこまではゆかないか。尤も仮にそこまで廉であつても、毎日マーケットのお弁当を食べたいとも思ひにくい。

 褒めてゐるのか、くさしてゐるのか、些か微妙なところだが、便利だけれど頼りにはし(たく)ないのが、マーケット製お弁当に対する気分なので、折合ひをつける針の振れ具合が大きくなるのも仕方ないでせう

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 その針が片方に振れた時に買つたのが、画像のお弁当で、確か“木ノ子たつぷりデミグラスソースのハンバーグ弁当”とか、無闇に長い名前だつた。フライドポテトに茹でたブロッコリーと人参。少し計りのポテトサラド、スパゲッティのケチャップ炒めが添へられて、四百円くらゐ。自慢げな名前ほど“木ノ子たつぷり”なソースではなかつたし、ハンバーグ自体も(お弁当としては)並の出來でもあつた。とは云へ名前の酷さに目を瞑れば、ただのハンバーグ弁当で、さう考へれば、妥当であらうかね。そんなことを思ひながら、罐麦酒を飲み、また平らげた。平日の夜に無精を決め込むにはまあ、折合ひのつくところである。