閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

933 蕎麦屋の品書きに

 蕎麦屋かつ丼はうまいといふ。蕎麦つゆからの転用がどうかう、そんな理由だつたか。種ものに天麩羅もあるから、揚げるのも不便はないし、確かに説得力はある。尤もかつ丼屋のかつ丼と較べたことがないから、事實かどうか、そこは保留としておく。

 ところでチェーン店の蕎麦屋は、種ものもさうだが、品書きが多岐にわたつてゐる。稲荷寿司やら細巻はいい。玉子丼やカレー・ライスの類も判らなくはない。併し同じ麺類だからと云ひたいのか、ラーメンまで並べられると、それは流石にちがふんではないかと思へる。

 さう思つてゐたら、某チェーンの蕎麦屋冷し中華があつたから、びつくりを通り過ぎて笑つた。五百円くらゐ。冷し蕎麦の親類とでも考へたのかどうか。

 食べてみた。まづくはない。といふより、値段を考慮し、且つ私が冷し中華を好む分も加へれば、及第点を附けられる程度には…少くとも、百円ほど高いコンビニエンス・ストアの冷し中華よりは…うまい。若布は無闇に多いし、ハムの切り方は雜だし、たれが業務用なのは疑念の余地もないけれど、それでも(ある程度は)成り立つてしまふのが、冷し中華の面白さなのかも知れない。