閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

976 厚揚げはえらい

 厚揚げはえらいものだと思ふ。

 

 註文を受けてから揚げて出された厚揚げほど、落ち着いて呑める雰囲気を感じるお摘みは少い。唐揚げも確かに喜ばしいけれど、昂奮が先に立つてしまふ。

 多すぎるくらゐの削り節、刻み葱、おろし生姜に、ぽん酢か醤油。そこに大根おろしが添へてあれば、万全のかまへが整つたと云つていい。

 

 経験的な話をすると、厚揚げは一丁の豆腐を、賽子のやうに切り分けて仕立てるのが、基本の姿であるらしい。それが詰り、合理的なのだらうな。勿論うまい。

 別の仕立て方もあつて、画像の厚揚げは、豆腐を分厚いポテトチップスのやうに切つてある。その名に反してはゐるけれど、これも叉うまい。

 

 厚揚げは矢張りえらいものだ。