閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

628 スタミナ

 食べものの味附けと称してよく解らないのは、サラダ味とバーベキュー味ではないかと思ふ。それぞれに何となく、共通する傾向はあるのだが、さてそれがサラダやバーベキューの味なのか知らと云へば、首を傾げざるを得ない。

 スタミナ焼きはもつと解らんですな。尤も解らんなりの説得力はある。たれがどうやつて思ひついたのか、サラダ味やバーベキュー味より巧妙な感じがされて、この辺りを突き詰めてゆけば、名附けのこつが見える気がする。

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 それは兎も角、スタミナ焼きはうまい。

 何やかにやで晝めしを久しぶりに外で食した某日、スタミナ焼き定食にしたのは、これなら間違ひはないと確信があつたからで、その確信は裏切られなかつた。

 先に云ふと、不満が無いわけではない。大蒜(の芽)もあしらつてほしかつたとか、砂糖か味醂か、今少し甘みを含ましてもよかつたとか、豚肉の脂を活かせばスタミナ感が強調されたのにとか、並べ立てることは出來る。

 併しである。豚肉と玉葱、韮といふ簡潔な組合せに、濃いめの醤油(多分鰹節か何か出汁を入れてある)の味附け。そこに白胡麻を散らした一皿とごはんが、はいお待ち遠さまと出されてごらんなさい。きつと昂奮するし、實際わたしは昂奮した。