閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1013 予定の外

 パナソニックにGH2といふデジタルカメラがあつた。

 發賣は平成廿二年…十三年前である。その時に父親が、十倍のズームレンズと一緒に贖つた。懇意の電器屋パナソニックを扱つてゐたのが理由のひとつ。この手の玩具を買ふにあたつて、最新型を慾しがる指向が發揮されたのが、もうひとつの事情。ここで断つておくと、父親は冩眞の趣味も、カメラを愛玩する癖も持合せない。不肖の倅が淫するのを目の隅に入れ、ああいふ玩具もあるのかと思つたのだらう。そのGH2が手元にきた。

 倅よ、使ふか。

 率直なところ、ちよつと困つた。私が持つてゐるレンズ交換の出來るデジタルカメラが、マイクロフォーサーズ規格なのは事實である。事實ではあるが、現時点で私の主カメラはGRⅢでもある。このタイミングでマイクロフォーサーズが追加されて、どこまで使ふものか、どうも心許ない。一方で内藏されたEVF、自在に動くモニター、高倍率のズームレンズの魅力は、型の旧さやサイズに重さを横に置いて、少からず感じられたのも事實である。

 親父どの、使はうぞ。

 さういふ事情で、十三年前のフラグシップ機が、充電器、予備の電池、ケイスにレンズフードの一緒にきた。ね。判り易い経緯でせう。尤も令和五年末から同六年初頭の大坂で、使ふ予定はない。使ひ方の見当はつくといつてもそれは、操作の大まかであつて、細かい設定になると…ひとまづのリセットは行つたけれども…別の問題である。それにストラップの問題が残つてゐる。父親は本体に同梱されたのを使つてゐたが、高倍率のズームレンズを附けて持ち出すには、少々頼りない。出掛け序でに一本、贖つて、今年の買ひものの〆にいたしませう。これも叉、予定の外である。