閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

966 GRⅢを乗せる話

 五月のいつだつたか、[GRⅢでも使へる棒]と題して、一脚が慾しいと書いた。その一脚を先日、贖つた。スリックの中古品、雲台が附いて二千二百円。四段だけれど、三段まで伸ばせば、私の視線より少しひくい…詰り不便ではない…程度になる。手首を通せるストラップ(安つぽい)もあるから、転ばす心配は少くて済むし、杖のやうにも使へる。贖つた事情と云へば、GRⅢで使ひたいと思つたからである。あの機種には強力な手振れ補正がある、といふ指摘はまことに正しい。そこは認めつつ、併しそれがGRⅢで一脚を使はない理由にはなるまいと反論はしておく。それで乗せた。訳知りな感じがして、中々似合ふ。

 (流石だなおれは)

さう自讚してから、こまつたことに気がついた。我がGRⅢには、サードパーティ製のキャップを附けてある。内蔵の脆さうなレンズカヴァの保護が目的で、これがGRⅢの底面をわづかにはみ出す。そのはみ出した部分が、雲台の邪魔になるんである。乗せる時に外せば済む話ではあるが、何となく気にはなる。それにアダプタ経由でフードを使ふのにも、無理が生じさうである。スリックの名誉の為に云へば、雲台が惡いわけではない。レンズ交換が出來る小振りな機種に、ズームレンズを附ければ、安定して使へる造りだもの。そこにGRⅢを乗せるのが、本筋でないのは、間違ひない。となると

 (どうもこの雲台では、いかんのではないか)

など思へてきた。念の為に云ふと、あくまでもGRⅢを乗せて使ふ話であつて、繰返すと、たとへば手持ちのマイクロフォーサーズなら、きつとこの雲台で具合が宜しい。詰りGRⅢを乗せるのに丁度よい雲台が必要ではないか、と思へてきたわけで、これはよくない兆候である。何しろ私は過去、雲台といふ物体に、関心を持つたことがない。従つてGRⅢに何を撰ぶのが適切なのか、判断が出來かねる。漠然と云ふなら、自由雲台なのだが、附け外しの手間が面倒さうである。その手間を省くプレート…アルカスイスの規格が、デファクト・スタンダードだつたか…を使へる雲台があるのは知つてゐて、但し自由雲台にさういふ方式があるのかどうか。

 (あるとして、大きさ重さと形状、更に値段がおれにとつて、適当と思へるのかもまた)

さつぱり解らない。世の中は広いから、私が知らないだけで、世界的に有名な雲台愛好家がゐないとは限らず、"年間ベスト雲台はこれだ!"とか、そんなコンテンツが、存在しないとも限らない。まああつても、参考にならない気がするから、それを探すのは止める。併しどんな雲台があるのか、贖ふ前に知つて、損はすまい。次の休み、[ヨドバシカメラ]辺りに立ち寄つて、あれこれ弄つてみるとしませうかね。