水無月に入り、改めてGRⅢを持ち出した。
手に持つたら、案外に重く感じて驚いた。
その重さはGRデジタルⅡとの比較した感じなので、余計に驚いた。気がする。GRⅢが小さくかるいのは、今さら改めるまでもない。最初の印象を思ひだすに、GRデジタルⅡより多少は重いけれど、大して変らんなと感じた記憶がある。そこで両者の重さ(どちらも本体のみ)を確めてみた。
・GRⅢ>二百廿七グラム
・GRデジタルⅡ>百六十八グラム
その差の五十九グラムは、予想より遥かに大きかつた。どの程度の重さかと云ふと、大体六枚切りの食麺麭一枚分らしい。僅かなちがひにも思へるが、比率にすると相当で、手の感覚が異なるのも当然である。フォーマットのちがひに目を向ければ、六枚切り食麺麭一枚程度の差に収まつてゐるだから凄い、と理解するのが正しからう。
矢張り使ひ易い。その使ひ易さ…機敏、軽快と云つてもいい…は、GRデジタルⅡから同Ⅲ/Ⅳ、GR/同Ⅱを経た…詰り十分な熟成と洗練を重ねた結果で、大した粘り腰である。併しここまで出來上つた後のGRⅣはどうなるのだらう。ペンタックス由來の防塵防滴と、外附けのEVFの採用くらゐしか思ひ浮ばず、その辺りを如何に仕上げるかの苦辛は、リコーの中のひとに任せておかう。
話が逸れた。戻しますよ。繰返しを厭はず云ふと、GRⅢにはJJC社のリストストラップと、同社のキャップを附けたのを、f64銘のポーチに入れてゐる。
このポーチが、GRデジタルⅡ用のリコー純正のケイスに較べ、案外に嵩張ると気がついた。当り前である。f64はストラップとキャップ附きGRⅢをすつぽり入れて余裕があり、前ポケット(予備の電池や外したキャップをしまへる)も附いてゐる。GRデジタルⅡの本体だけをぴつちり収めるリコーのケイスとは、造り方がちがふのだから、嵩張り具合が異ならなければ寧ろ不思議である。念を押して云ふと、このf64製ポーチ、私は気に入つてゐる。
但し気になる点もある。とくに開閉が、ファスナーで弧を描くやうな動作なのは、意外と面倒に思ふ。この点はフラップ式であるGRデジタルⅡ用ケイスの方が便利でいい。同じタイプのケイスは、GRⅢ用にも勿論あるが、それだとすつぽり収めるのは無理なので、入手は躊躇はれる。要するにこのポーチ、GRⅢを持ち出す際の保護には適切としても、素早く取り出すには些か便利が惡い。対処を考へる必要がある。
そこで思ひつくのは二つ。
先づストラップを肩乃至首から下げられる長さのに交換すること。持ち出し時はf64に入れ、使ふ時はぶら下げる算段である。但しこれは以前から探してゐるけれど、しつくりくる一本が見当らない。細身で柔か、簡素な帆布製であればいいのに、かういふのは商ひにならないのか知ら。
もうひとつは肩首から下げられる小さなバッグを見繕ふこと。手元には一澤頒布や犬印鞄、ポーター、キプリングのショルダーバッグがあるのに、それを使はないのは変だといふ自分の心の聲は聞こえる。耳を傾けつつ、云ひわけをするなら、GRⅢに私は、新品をあてがつてきた。気合ひの證でも、偏愛の顕れでも、呼び方は自在として、バッグの見繕ひが例外になるだらうか…これは文章技法の反語ですからね。
詳しくは見てゐないから、その辺は曖昧なままに、確かドンケにごく小振りなバッグがあつたと思ふ。ハクバにもエツミにもロゥプロにも、さういふ製品はあつた筈で、GRⅢに予備の電池とスマートフォン、それからお札を二枚か三枚と小錢を一緒にはふり込めば、半日の漫歩から馴染みの呑み屋での晩酌まで、なだらかに過せると思ふし、GRデジタルⅡとの五十九グラム差も気になりはすまい。