閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

420 数字繋り

 一ぺんだけデジタル一眼レフを買つた事がある。

 オリンパスE-420といふ機種。(所謂)標準ズーム・レンズのZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6がセットで、四万円くらゐだつたと記憶してゐる。買つた理由は大きく

 

 ・廉価だつたから。

 ・宮﨑あおいが使つてゐる(らしい)から。

 

のふたつ。思ひ出すと我ながら莫迦ばかしい。この程度の理由だつたから暫く使つて賣り払つた。

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 オリンパスのサイトを見ると(画像も拝借する)平成廿年の發賣とあつたからびつくりした。十年より前の機種とは思はなかつた。

 

https://www.olympus.co.jp/technology/museum/camera/products/digital-e/e-420/?page=technology_museum

 

 当時の評価はさほどに高くない。

 

 【新製品レビュー】オリンパスE-420

 ~コントラストAFに対応した最軽量デジタル一眼レフ

https://dc.watch.impress.co.jp/cda/review/2008/04/21/8231.html

 

 精々並みの新型が出ましたよ程度の書き方ですな。

 

 オリンパスE-420」とパンケーキレンズの薄さを楽しむ 

https://www-itmedia-co-jp.cdn.ampproject.org/c/s/www.itmedia.co.jp/lifestyle/amp/0805/09/news120.html?usqp=mq331AQOKAGYAb7l_Nzi3tfi8AE%3D

 

 を見ても、主役になつてゐるのはZUIKO DIGITAL 25mm F2.8の方で、わたしが買つたのは要するに衝動的だつたといふ事になる。自慢にならない。

 ここでひとつ、大慌てで云ひ訳をしておくと、キヤノンニコンデジタル一眼レフを撰ばなかつたのは、値段やキャラクタだけでなく、小さくて軽いといふ点もあつた。それはフォーサーズといふ小フォーマットだから出來たサイズで

 「APSフォーマットに較べてぼけにくい」

などと云はれもしてゐたが、わたしは当時からそこに重きを置かなかつた。寧ろ肩頸に負担の掛からない小ささに魅力を感じたのは確かである。云ひ訳終り。

 

 フォーサーズの規格をどう評価するかは六づかしい。一眼レフで失敗しつつ、マイクロ・フォーサーズに移行出來たのだから、まつたく駄目だとは云へない。實用に足るかは兎も角、マイクロ・フォーサーズでも従來のレンズを使へる点も宜しい。その一方でより大きなフォーマットに対して小型軽量に仕上げられる利点があるのに、高機能化に伴ふ大型化に進んでゐる(と見られる)のは、如何なものかと思はれる。

 「レンズが小振りになるから、全体として小ささは損なはれませんよ」

と擁護するひとも出るだらうが、それは結果としてさうなつてゐるだけですと反論しておかう。わたしが云ふのは、設計をする段階での考へ方が誤つてゐるのではないか、といふ事なんである。さうしなければAPSやフル・サイズのフォーマットに太刀打ち出來ないと再反論があるなら、何故対抗しなくてはなりませんかと云ひ返す。オリンパスのたれが云つたかは知らないが、OM-1/2だつたら

 「他社製カメラなら、ボディ一台にレンズ三本しか持ち出せない時でも、ボディ二台にレンズ五本は持てる」

と豪語したさうで、小振りなカメラの矜持はかくあらねばならぬと思ふと、現行のマイクロ・フォーサーズを見る目は些かきつくなつて仕舞ふ。

 

 何の話だつたか知ら。

 さう。E-420でした。

 實は最近、ちよいと慾しいかなと思つてゐる。ちやんと動作して、電池がどうにかなるのならといふ條件附き。念の為に云ふと、宮﨑あおい熱が再燃したわけではありませんよ。自分でも十年余り前のカメラを今さら慾しがつてどうするとは思ふのだが、かういふ物慾に判り易い理由があるわけではない。無理に理由を探すと、リコーのGRⅢを例外に、もう何年もこれは断然手に入れたいと思へるカメラが見当らないのが大きい。

 性能がどうかうではなく、スタイルの問題。速撮りはしないし、連冩も超高感度も求めないわたしにすれば、E-420以降のカメラで大きな不満を感じはしない。さうなるの大事なのは…大事に思へるのは、(レンズを含めた)カメラ自体のスタイルを恰好よく感じるかどうかで、GRⅢに到るまでにさう感じたのは、パナソニックGF1とペンタックスMX-1、それからフジフヰルムのX-70くらゐしか思ひ出せない。

 十年で三機種。

 びつくりマークを附けたい気分になつてくる。序でながらデジタル・カメラの今後は、きつと一秒で何駒撮れるとか何とかより、鞄にはふり込み、或は頸にぶら下げたいと思はせられるかどうかで、大きく変るのではないか。

 と云つてから、改めてE-420を見る。別にどうと云ふ事はない。好意を含めてもオーソドックスが精一杯で、褒めるのは六づかしい。ではここまで書いたスタイルがどうかうと矛盾しないかと思へてきて、確かに矛盾してゐる。その矛盾の原因は以前に買つたといふ一点に尽きる。記憶の改竄と云つてもいい。自分に都合のいい風に考へれば

 「これくらゐでいいのだ」

やうやく判つたと理窟を捏ねてもよからうが、矢張り物慾に筋を立てるのは無理がある。なので何だか判らないけれど、慾しいと思ふのだと押し通す。

 

 仮に動作に問題が無くて、電池もどうにかなるE-420を入手出來たとする。本体だけで撮れないのは当然だから、レンズも入手しなくてはならなくなる。何があつた(フォーサーズ規格のレンズはすべて生産が終つてゐる)のか。

 

◾️https://www.four-thirds.org/jp/fourthirds/single.html

◾️https://www.four-thirds.org/jp/fourthirds/wide.html

◾️https://www.four-thirds.org/jp/fourthirds/standard.html

 

 便利なもので、上のサイトで順に単勝点、広角ズーム・レンズ、標準ズーム・レンズの概要を大掴みに出來る。その中でざつと

 

◾️オリンパス

 ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8

 ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6

◾️シグマ

 30mm F1.4 EX DC HSM

 10-20mm F4-5.6 EX DC HSM

 18-50mm F3.5-5.6 DC

 

の五本が目に止つた。"ボディ二台にレンズ五本"を意識したわけではない。また全部慾しいと思つたのでもない。二本もあれば十分な筈である。

 25ミリは確定でいいでせう。ボディ・キャップ代りになるし、アダプタを使つて手持ちのマイクロ・フォーサーズ機にも転用出來る。

 そこを前提にすると30ミリは落ちる。止む事を得まい。後は広角に寄るか、標準的な画角を優先するか。18-50mmはフル・サイズ換算で36-100ミリに相当する。広角端が物足りない。オリンパスには14ミリ始まりが何本かあつたのだが、どれもどこか気に入らない。それに中望遠はそこまで使はないだらうから、18-50mmも落とす。となると折角だから9-18mmにして、オリンパスで調へたくなるんだが、惜しい事に鏡胴の姿が好もしくない。シグマはその点に文句は無いけれど、9-18mmより二百グラム余りも…25ミリ二本分よりまだ重いのは目を瞑りかねる。保留にする。

 いつそ、25ミリ一本に決めて仕舞ふ方がいいかも知れない。テレ・コンバータは用意されてゐるか、ゐたかだし、他社製のワイド・コンバータが使へる可能性もある。二本目を撰ぶより、そつちやフードやストラップ、ケイスの類に遣ふのがこの際、正しい無駄遣ひと呼べるのではなからうか。いや實際に買ふかどうかは、まつたく別の問題になるのだが。