記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。
宇宙冒険大活劇漫画映画。と云へば、この映画については八割方、伝はるのではないかと思ふ。
凄腕の"仕事屋"クラッシャー。
謎めいた依頼と美女。
それから惡辣な陰謀。
後はもう、判るでせう。
豪快なカー・チェイスと華麗な空中戰。
派手な撃ち合ひに爆發。
主人公に迫る危機と逆襲。
冒険活劇に求められる要素を、整然と、併し詰め込めるだけ詰め込んだお話は大団円まで、留まらずに雪崩れ込む。
なーんにも、考へなくて宜しい。何しろ活劇である。面倒な伏線は勿論、深遠な考察も、人生についての箴言も、現實への皮肉や批判も無い。脚本は典型的で類型的で古典的。だから、怪しい面構への奴は惡党で、惡党は必ず死ぬ。単純明快の意味でも、空虚の意味でも、まことに時代劇である。
かう書く以上、典型も類型も時代劇も、ここでは褒め言葉になる。単純明快な脚本が成り立つのは、演出…見せ方が上手いからで、アニメイションの場合は、作画のよさを加へる必要はあるが、この映画は両方を満たしてある。
尤も不満を感じないわけではない。所々に挟み込まれる作画の遊びや、演出上の冗談はスマートとは云へないし、惡党の扱ひには一考の余地…ことに事實上、最後の敵になるキリーの死に際が淡泊なのは気に入らない…があつたとも思ふ。
とは云へ、細々した不満をあげつらふのと樂むのなら、後者の方がいいに決つてゐるし、これは後者に値する一本でもある。安心してポップコーンとコーラを用意しぽかんと口を空け、大音量で観れば、気分がすつきりする。ええこれはわたしが、大きに請け合ひませう。