閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

842 覆し

 何日か前、久しぶりにオリンパスE-PM2を取り出した。パナソニックの14ミリ/F2.5(初期型)を附けてゐる。元々はステップアップ・リングを経由してズイコー28ミリ用の円形フード(中古で二千円くらゐだつたか)をあててゐたが、ふと思ひついて、F-FOTOのスリット入りフードに交換してみた。ライツの35ミリ用フードを模した形のねぢ込み式。これが中々恰好いい。GRデジタルⅡ用に買つたのが、惡くない感じだつたので、入手したんである。千五百円ほどだから、ライツ製フードほど、無理難題の値附けではない。在庫の都合で手に入れたのは35ミリ用だつたが、スクェアで撮る分には隅がけられることもない。

 かういふ思ひつきは、たちが惡い。

 恰好よくなつたカメラが手元にあれば、撮りに行かうかと考へるし、撮りに行かうと思つたら、それまで附けてゐたストラップが気に入らないと感じられてきて、それは肩から下げる式の長いやつなのだが、手首を通す式か、ごく短いやつにしたくなつてくる。

 ちよと、お待ちなさい。

 何か間違つちやあ、ゐませんかね。

 まつたくその通りです。

 だからたちが惡いと云つたでせう。

 とは云ふものの、ストラップ(の長さ)が、カメラを持ち出す上で見逃せない点なのは事實である。尤もこれを厳密に考へれば、どんな鞄を使ふかで変る面があるから、ストラップだけで云々するのは些か無理がある。その辺りを頭の片隅に置きつつ、E-PM2に似合ふ(だらう)、好ましいストラップに就て書き附けておきたい。

 革製は硬いし手入れが面倒さうな上、E-PM2には似合ふ気がしない。ひさうでもない。ナイロンのは安つぽい感じがする。組紐のもあるが、厭みだねあれは。背広の裏地に凝るひと向けだと思ふ。布製の薄くて細いのが好みに適ふ。柔かくて手にもカメラ本体にも巻きつけ易く、手触りもいい。好もしいのは帆布だけれど、何故だか帆布だと頑丈の方向に進みがちになるのが気に入らない。さう云へばドンケには帆布でよい感じのストラップがあつた。ストラップ函のどこかにある筈で、ただあれは一眼レフ用だから、E-PM2には大袈裟である。それに肩首にぶら下げないのを前提にすると、撰択肢は更に減る。

 手首を通す式なら、オプテック辺りが出してゐたかと思ふが、ネオプレンかも知れない。あれにはどうも、ぼつてりした感触の印象が強く、手を出さうとは思ひにくい。個人の感想ですからね、愛用者は文句を云つちやあいけませんよ。さうなつたらエツミかハクバで探すのがこの際、確實な判断になるのだらうか。一度どちらかの手首通し式ストラップを買つた記憶がある。その記憶に誤りがなければ併し、カメラ本体側に近い部分が、案外と持つ時の邪魔になつた。がらくた函にハクバ製の一眼レフ用手首通しストラップを見つけたから、試しに附けると果してその通りだつた。形状でどうにかなりさうでもあるが、違和感は残るだらう。

 それで改めてストラップをはふり込んだ函を探つたら、細身で首掛け式の革製ストラップがあつた。くたくたにやれてゐたのを附けると、不似合ひではなく、少し驚いた。何故か知らと不思議になつてきつと、F-FOTOのフードがライツ擬きだからではないかと思つた。成る程、カメラとレンズとフード全体のシルエットで、釣り合ふストラップも変つてくるのだな。さう納得した序でに、暫くはこれで使はうかと前段を覆すことにもした。見るひとによつては、厭みな眞似だねと思はれるだらうが、それはそれだものと云つたら、これもまた覆しだらうか。覆しだらうねえ。