閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

962 ペンタックスの一眼レフが慾しい、といふ話

 手元に三本…単焦点が二本とズーム・レンズが一本…、Kバヨネット・マウントのレンズがある。銀塩のボディも二台持つてゐる(どちらもリコー)けれど、令和の今に常用出來るかと云ふと、流石に無理がある。主に費用の点で。

 ここで年少の友人である、クロスロードG君の話をしなくてはならない。かれはカメラのブランドにまつたく頓着しない男なので、ニコンと云ひながら、實はコシナOEM機(念を押すと、フヰルムの時代ですよ)にコシナ銘の超広角レンズを附け、手擦れがするくらゐに使ひ込んでゐた。あれはまつたく恰好よかつたなあ。

 そのクロスロードG君が、何年か前から使つてゐるのが、ペンタックスデジタル一眼レフで、具体的な機種は知らない。訊けば教へてくれるだらうが、知らないままの方がよささうだとも思ふ。かれのことだから、實用の視点に徹した撰択だつたのは、きつと間違ひない。

 

 ペンタックスの現行機は、ライカ判一機種とAPS判が二機種(どちらも派生機種は除いて)、用意されてゐる。ぱつと見て、姿が似てゐるのがよい。

 「我われが考へる、デジタル一眼レフとは、かういふスタイリングなのです」

さう宣言してゐるやうに感じられる。尤もそれが、優れてゐるかと云へば、疑念は残る。また疑念を残したまま、現行機を新品で贖ふのに、躊躇を覚えるのは当然であつて、中古を視界に入れたくなる。

 併し(ペンタックスに限つたことではなく)、中古のデジタル一眼レフを視界に入れた場合、どうしても電池を気にせざるを得ない。旧式だと電池が草臥れてゐる可能性は十分以上にあるし、現行品か互換品が無ければ、電池が駄目になつた時点でお仕舞ひである。旧型のペンタックスで何機種か、乾電池を使へるのがあつたと思ひ出した。

 確かに過去のコンパクト・デジタルカメラで、乾電池を使ふ機種は幾つか(キヤノンやフジ、ニコンにも)あつた。手元のGRデジタルⅡでも、緊急避難的に使へる。とは云つても、デジタル一眼レフを乾電池で動かさうとしたのは、ペンタックスくらゐではなからうか。へんなところに力こぶを作りたがる癖は、伝統藝と呼びたくもなるが、さういふ非常手段が用意されてゐるのは、決して惡くはない。

 

 さて。もうひとつ、ペンタックス銀塩の頃から、一眼レフの型番の附け方が、へたつぴいだと云ひたい。序列や時系列の、規則性が見当らないから、型番を見ても、どんな位置附けなのか、實に判りにくい。熱心な愛好家、即ちペンタキシアンからは

 「精進が足りない」

と咜られさうでもあるが、私をKバヨネット・マウントに導いたのはリコーだもの。それとも純然たるペンタキシアンなら理解出來る、暗號体系でもあるのだらうか。

 要するに何を撰べば失敗のリスクを減らせるのか、見当が附かない。かと云つて何でもいいから手を出せばいいわけでもない。手元の三本はいづれも、Kバヨネットとしては旧式で、その旧Kバヨネットでも動作する機種が必要なのは、間違ひのないところではある。

 ここまで書いて、私がペンタックスデジタル一眼レフに求める條件は、乾電池"でも"動作し、且つ旧式のKバヨネットが使へること、だと判つた。文字にするのは、曖昧な考へを纏めるのに便利だなあ…が、ここまで纏めても、機種の撰定には到らない。この際だから前言を翻して、クロスロードG君に、貴君が使つてゐるのは何ですかと、教へを請はうか。かういふ物眞似なら、咜られる心配もあるまい。