閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

981 喜ばしきは

早鮓に敢ての澤乃井普通酒

おぼろ豆腐御膳には大辛口。

 

 一番汲みも呑んだ。

 何年か前に代替りしてから、礼儀作法を學んだのか、たいへん落ち着いた佇まい。

 買つて直ぐ呑んだ時は、やや酸味が立つてゐたが、翌朝になると、それも佳い感じに収まつて、贅沢を云ふなら、旧來のやんちやな醸しでも、つくつてほしかつた気がする。

 とは云へ、藏が開いた場所で、新しいお酒を呑み、また贖へたことが、先づは喜ばしく、しぼりたての試飲にあたつては、利き猪口に注ぎながら藏のひとは

 「今年も宜しくお願ひします」

大きな笑顔で挨拶をしてくれた。