閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1113 焼酎ハイに就て

 甲類の焼酎をソーダで割つた飲みもの、と解釈してゐる。呑み屋の品書きでは、チューハイ表記が多いんではなからうか。まこと無愛想。冷たいのと炭酸の快さだけで呑ませる一ぱいだと思ふ。併しその冷たさと炭酸の快さが、好もしく感じられるのも、一方の事實…気分。要するに私は、焼酎ハイを呑むことが少からずある。

 大体は廉な(詰り私が通ふやうな)呑み屋に潜り込んだ時の一ぱい目。お代りをすることもある。もつ煮やら鶏や蛸の唐揚げ、或はミンチカツのやうに、ちよいとしつこいお摘みに似合ふ。尤も焼酎ハイだけで通したことはない。まあさういふ飲みものではないし、そもそも旨いまづいを云々する必要もありますまいしね。

 最初の一ぱい、或は二杯には、具合がいい。この手の系列には、檸檬や烏龍茶や緑茶抹茶もあるけれど、ただの焼酎ハイが、一ばん安心出來る。不見転の呑み屋に入つても、串焼きのたれの組合せなら、外れる心配がほぼ要らない。正しい意味での無難とは、かういふ時に用ゐるのではなからうか。

 

 雑に纏めれば、渇きにはいいけれど、それで最後まで押し通すのは無理を感じる。といふのが、私の焼酎ハイの位置附け。さうだそれから、次の一ぱいに撰ぶのが、お酒にハイボール、或は黑糖焼酎や泡盛でも、なだらかに移れるのは、焼酎ハイの隠れた長所かと思はれる。身も蓋もなく、後を引く特徴がないとも云へるのだが、焼酎ハイで渇きを、もつ煮で空腹を宥めながら、品書きにゆつくり目を通し

 (鯵フライに串かつ。玉葱は焼いてもらつて、焼酎ハイのお代り。それからハラミを塩で二本、獅子唐、お漬けものでお酒を一ぱい)

などと絵図を描くのは、私の密かな樂みなんです。こんなことを云つたら、熱烈な焼酎ハイ愛好家からは、呆れられるやも知れないが、これも叉、ひとつの呑み方なのだと考へてもらひたい。さて話も尽きたところで、一ぱい引つかけに出掛けませうか。勿論最初は焼酎ハイで。