閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1114 高々百円精々二百円

 上段は玉葱フライ。

 下段が串かつ。

 画像はどちらもウスター・ソースだが、ソース抜きで味つけぽん酢や醤油でやつつけられもする。

 空腹をかろく感じる時、そのかろさの具合で、本数の調整が出來るから、串揚げは中々に有難い。串かつを二本にしていいし、烏賊や鮭や鶉玉子、或は赤ウインナら辺から、お好みを追加するのもいい。早鮓の通人が八釜しく云ふやうな註文の順番があるわけでなく(あればあつたで知りたいとは思ふけれど)、食べたい種を食べたい順に揚げてもらへば済むのだから、気らくとは詰り、かういふことか。

 

 串揚げと早鮓にはひとつ、共通の注意すべき点がある。即ち出されたら、速やかに食べること。揚げたての串かつを前に、だら助を決め込むのは、わざわざ自分で、まづくしてゐるのだから、阿房な態度である。などと毒づけば

 「串揚げなんざ一本高々百円とか精々が二百円とか、その程度なんだから、気にしなさんな」

と反論されさうだが、すりやあ大きな心得ちがひ。なんとなれば串揚げは

 「註文したら、必ず、出來たてが、供される」

からで、早鮓とこの一点では、同族と見なしていい。高々百円とか精々二百円の串揚げが、一貫幾らにつくのか判らない大間産鮪のとろなんぞと(形式の上で)張り合へるのは、なんとも愉快な感じがされる。