閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1153 神無月は藏の月(当日には到れず)

 気がつけば、藏が開く日が近くなつてゐた。

 

 ニューナンブ集合のこともある。なので事前にダイヤグラムを確めると、午前九時の開場前後に、沢井驛に着到するのは、以下だと判つた。

 

・立川驛 午前七時卅分/同四十分發

 沢井驛 午前八時卅七分着

・立川驛 午前八時六分/同十二分發

 沢井驛 午前九時十六分着

 

 立川驛の發車時刻が複数あるのは、青梅驛での待ち時間のちがひ。成る程、さう納得して

 (前泊はしなくても、いいんぢやあなからうか)

と思つた。立川七時半は、流石にちよいと厳しい…この"厳しい"は、"眠い"のとほぼ同じ意味合ひ…けれど、八時十二分なら、何といふこともない。なので前泊で遣ふ分を、当日に廻すと決め、昭島の予約は変更した。

 そのダイヤグラムを確めてゐたら、中央線快速に二階建てのグリーン車が導入されたと知つた。本來はグリーン券を買はねばならないが、それは來春から。現時点では無料でお試し乗車が出來る。

 (廿六日に、乗れるか知ら)

さう思つたが、肝腎の運行予定が非公開で、乗れるかどうか判らない。見込みのダイヤグラムで、試験運行されたら、幸運だから、躊躇はず乗らう。

 グリーン車は兎も角、上の動線をニューナンブの面々に報せた。それぞれ、事情や都合があるのは、判つてゐるが(残念ながらクロスロードG君が、動けなくなつてしまつた)、こつちの見込みを伝へるくらゐ、惡くはないでせう。どうせ見込みだし、派手に寝過ごす可能性も残つてゐる。

 もうひとつ。カメラを持ち出すかどうか、考へる必要がある。澤乃井を味はふのが目的だから、持ち出さなくても、困りはしない。荷物を減らせるのは、大きな利点でもある。ただあの賑々しくて花やかな時間を、切り取りたい気持ちがあるのも、一方の事實であつて、中々悩ましい。

 持ち出すなら、GRⅢが素直な撰択になると思ふ。併し醉ふのが前提の場所に、聯れて行くのは躊躇ひを感じもする。かと云つて、GRデジタルⅡでは(根拠はないけれど)、力不足に思はれる。寧ろショートズームを附けた、マイクロフォーサーズの方が、使ひ易いかも知れない。この辺りは、諸々を勘案しつつ、ぎりぎりまで迷ひたい。お祭りの前の樂みは、多いに越したことはないものね。

 

 ここまで書いたのが神無月廿日。

 翌々日の廿二日に事情が変つた。

 

 その背景まで、いちいち記しはしないが、藏開きより優先度の高い事情が發生して、澤乃井へと足を運べなくなる可能性が、非常に高くなつたんである。残念ではあるが、私はプライオリティを理解出來る男でもある。ニューナンブの面々には、速やかにその旨を伝へた。

 

 何とかなりさうなら、何とかしたいと思つたが、残念ながら、さうはゆかないことがはつきりして、昭島のキャンセルをした。たれかが惡いわけではないから、文句を云ふわけにも、八つ当りすることも出來ないのには参らされた。澤乃井へは別の機會を作つて、足を運ばうと決めてゐる。

 

 令和六年の藏は、開く日に終つたのだつた。