閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

1254 ゴーゼロ

 キヤノンにEOS R50がある。

 ニコンには、Z50Ⅱがある。

 どちらも所謂エントリー機。

 私が常用するのは、リコーのGRⅢで、APSのフォーマットを採用してゐる。そのGRⅢと

 

・併用が出來る。

・レンズ交換が可能。

・それなりに廉価。

 

上の條件を満たすのが両機で、富士フイルムソニーパナソニックやシグマやオリンパ…ではなかつた、OMデジタルソリューションズが挙げないのは、どれかを満たしてゐないからで、各社の各機種が駄目といふのではない。

 

 けふ…令和七年の皐月初旬時点、キヤノンニコン、それぞれのオンラインショップでの値段を確めてみた。標準ズームレンズ附なのは、レンズを持つてゐないからである。

 

・R50(18-45ミリ附):十二万六千五百円

・Z50Ⅱ(16-50ミリ附):十六万六千百円

 

 ニコンがざつと、四万円ほど高い。發賣時期のちがひを含めれば(ニコンの方がぐつと新しい)、妥当な価格差か。それにキヤノンは、フォーマットが僅かに大きいこともあつて、広角側が些か弱い。前提はGRⅢとの併用だから、その点では、Z50Ⅱが有利だらう。それ以外の、機能的な比較は、しなくてもいいでせう。どちらを撰んだところで、不満を感じるとは思へない。

 

 ではZ50Ⅱで決り…でよければ、この稿を書かなくてよく、後は金策の話になる。迷ふのは、別の要素があるからで、有り体に云ふならそれは、見た目のちがひである。ニコンはZで、ミラーレス一眼に再参入してから(念の為に云ふとあの會社は、嘗てニコン1といふミラーレス機を出してゐたのです)、その見た目が何とも、評価しにくくなつた。フラグシップからエントリーまで、(ある程度)一貫したスタイリングになつたのはいいが、その一貫具合が好みに適はない。

 その点に限ればR50は、銀塩EOSの頃からのシルエットを(大体は)保つてゐる。更に云ふなら、そのシルエットのぱつと見は、手元のEOS100(銀塩EOSの第二世代である)から、それほど変つてゐない感じがする。これは中々にすごい。現在のEOSの基本的な形状は、その銀塩第二世代で定まつたと云へるのだが(詰りニコンZより"一貫性の期間"が、遥かにながい)、私とEOSのファースト・コンタクトは、實にその頃であつて、お馴染みの度合ひがちがふのです。

 

 交換レンズのラインアップは、どうだらうか。

 率直に云ふなら、どちらも貧弱。

 フルサイズ…どうも和解しにくい用語だなあ。仕方がないとしておかうか…対応のレンズも、附けは出來る。併しこつちは、GRⅢと併用し易い、コンパクトさを求めてゐる。莫迦みたいに大きく重いレンズは、最初から撰択肢に入らない。大きさ重さの分、性能が優れてゐのは判るが、持ち出す気になれなければ、無いのと同じである。

 ここで広角好みとしては、具体的なラインアップ…それもニュートラルな単焦点レンズのGRⅢに対して、ズームレンズに目を向けざるを得ない。

 

キヤノン

 10-18ミリ(フルサイズ換算:16-29ミリ)

 ※オンラインショップで五万五千円

 14-30ミリ(フルサイズ換算:22-48ミリ)

 ※オンラインショップで五万五千円

 

ニコン

 12-28ミリ(フルサイズ換算:18-42ミリ)

 ※オンラインショップで五万三千九百円

 

 いづれも使ふのに不便はなささうだが、この中でなら、一ばん広角に強い、10-18ミリに惹かれるものがある。焦点距離がシームレスに、18-45ミリへと繋がる(フルサイズに換算すれば、全体で16ミリから72ミリ)ところももよい。Zマウント・ニッコールの場合、焦点距離のオーバーラップが使ひ易さうである。こちらは二本のフルサイズ換算で、18-75ミリ。二本纏めると、キヤノンよりほんの少し、望遠寄りになるのは意外だつたが、決定的なちがひとは云へまい。

 敢て云ふなら、ニッコールには24ミリのAPS単焦点と、フルサイズ対応なのに、随分と小さな26/28/40ミリ(26ミリを除く三本は、オンラインショップで五万円未満)があるのに対し、キヤノンにはさういふ一本が見当らない。この点は今のところ、と念を押しておかう。なにせあの會社は突然、とんでもないレンズを用意するからね。銀塩EOSの頃、35-350ミリといふズーム比十倍のレンズ(發賣は平成五年)を出したのはびつくりした。

 

 思ひ出話には逸れず、レンズに戻ると、サードパーティ製も何本か、又は何本もある。シグマやタムロン、それからコシナは勿論、よく知らない(多分中國の)會社も出してゐて、戻つたのはいいんだが、この辺はさつぱり判らない。シグマもタムロンも、銀塩EOSを使つてゐた頃、散々お世話になつたのになあ。

 雑な印象を云ふと、併しサードパーティは、富士フイルムのX用と、ソニーのE用に熱心と思へる。どちらも賣れてゐるから、乗つかるのだらうな。商ひの基本と云ふべきか。詰りアダプタを用ゐたレンズ撰びも含めて游ぶなら、そこからの撰択となる。ただこの稿の話題は(GRⅢと併用する為の)、キヤノンニコンのゴーゼロである。

 

 それでどつちに軍配を上げるのか。

 勿論まだ、決めてゐない。

 ここまで書きながら、どつちもいいなあと思つてゐる。

 ではGRⅢと組合せて、様になるのはどつちなのだらう。

 正直に云つてどつちも今ひとつ、不釣合ひな気がする。

 どちらもエントリー機だからかと思つて、キヤノンRとニコンZそれぞれの上位機種なら、と想像したが、矢張り不釣合ひだらうと思つた。これはキヤノンニコンが惡いからでなく、GRⅢが飛び抜けて恰好いい所為なので…ええこれは、ただの贔屓。だつたらそこは、目を瞑つていい。

 改めて考へると、気らくさで云へば、キヤノンだと思ふ。あすこには今も割りと、機種の階級が残つた感じがする。R50はその中の下層で、kissのやうな立ち位置。対してニコンには、コストの條件の中、最善を尽さうとした雰囲気…気分に重みがある。そのZ50Ⅱを、銀塩のF-601のやうと云つても、わかい讀者諸嬢諸氏は、首を傾げるだらうが。

 再び云ふ。R50とZ50Ⅱ、どちらが私にとつて、より好もしいのか、決めてゐない。身も蓋も無く云ふなら、贖ふかどうか自体、まだ決つてゐない。いい加減な話であり、いい加減な態度でもあつて、いやまつたく申し訳ないと思ひはするのだが、ふはふはと考へを巡らすのは、休日に無用な出費をせずに済む娯樂だから、仕方がない。