画像は何年も前、友人から贈られたカメラである、棚の隅に置いてあつた。
その名は“カメラくん”…ダイソーが出してゐて、ダイソーが扱つたくらゐだから、勿論デジタルではない。
ライカ判のフヰルムを用ゐ、背面下部中央のノブで巻き上げ、クランクで巻き戻す。他の操作箇所はシャッターと巻き戻しに使ふボタンだけ。元函の記載だと、最短撮影距離は一メートル。焦点合せ、絞り、シャッター速度は何も触れない。要するにフヰルム交換の出來る、使ひ捨…訂正、レンズ付きフィルムと見ればいい。フラッシュすら内藏してゐない点で、そこにももう一歩、及んでゐないと云へさうでもある。
アクセサリ・シューが無ければ、三脚穴も無い。ストラップを別に用意して附けられもしない。趣味性と云ふか、游びの余地も無い、云はば無いない尽しであつて、後はフヰルムを入れて撮るしかない。無理を承知しながら、“カメラくん”は撮影といふ行為に特化純化した姿なのだ、と云つておかうか。

まあ正直なところ、“カメラくん”贈られた日から、今に到るまで、フヰルムを通したことは、ただの一ぺんもないのだけれど。