閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

242 再びGF3のこと

 入手して以來、オリンパスのボディキャップ・レンズ(9ミリ)をつけつ放しで使つてゐる。ライカ判に換算して18ミリ相当で明るさはF8の固定。一応は距離の設定が可能だけれど、こんなのは飾りで、ふいと取り出してスイッチを入れ、縦横でばちばち撮ればそれでお仕舞ひ。安直と云はれる可能性はたつぷりあるが、では安直でどこがいけないんですと訊いて、満足な答が返される期待は皆無に等しいだらうなと思ふ。眞面目な話をする積りはなかつた。大体毎日、外に出る時はGF3を持ち出して、幾つかの不満…といふか不便が感じられてきたので、それを順不同に挙げてゆく。

 先づストラップ。今はライカ銘のコンパクト・デジタルカメラ用の手首に通せるタイプをつけてある。惡くはない。惡くはないが、取りつけが紐を通す方式なので、気がつくと捻れてゐて落ち着かない。肩首から下げるストラップは入手時、一緒にあつて、それを使ふ方法は考へられても、そもそもが肩首から下げたくないから、却下せざるを得ない。手元には三脚穴に捩ぢ込む手首用のストラップ(多分エツミ製)がある。手に持つと中々いいのだが、どう持ち運ぶかといふ問題が残る。

 續くのがケイス乃至バッグ。以前にも触れた通り、本体はLOGO by hamaのソフトケイスかシグマのポーチに入れてゐる。常用しない物はハクバのポーチに纏め、kiplingの小さなショルダー・バッグにはふり込んでゐるのだが、漠然としつくりこない。収まり具合はすつぽりだから、その点に文句はないとして、何がしつくりしないのか。今の主軸がGF1だから、義理を感じてゐるのかも知れない。漠然は落ち着かなくて困らされる。

 併し一ばんの問題はレンズである。と書いてから、自分でもをかしいと思つた。元々GF3はボディキャップ・レンズの為のカメラで、それ以外の(眞面目な)寫眞はGF1で撮ればいい。その筈だつたのに、何がひとつ、GF3でも“当り前に使へる”レンズがあつてもいいかなと思つてきた。だつたら手持ちのレンズを流用すれば解決するよと云はれさうで、確かにひとつの解決策である。それは認めつつ、その手持ちのレンズが似合はないといふ問題が出てくる。手持ちはパナソニックの14‐45ミリとシグマの30ミリ。性能に不満はないが、GF3には大振りなのが難点で、GF3のコンパクトがスポイルされるのは困る。そこで調べてみると、何本か似合ひさうなレンズがあつた。

 最初はパナソニックの14ミリ。確かGF3が現行機の頃は、セットでも賣られてゐたかと思ふ。28ミリ相当は馴染みのある画角で、併しこれはGF1で使ひたい。オリンパスの17ミリ(F2.8の方)も小振りだが、余程の掘出し価格なら兎も角、今から買ふレンズかといふ疑問がある。近い画角にはパナソニック20ミリがある。かなり評価が高いさうだが、それなら矢張りGF1で使ひたくなる。視点をズームレンズに向けると、パナソニックに14‐42ミリの電動式と12‐32ミリ(これもあまり恰好がよくない)があつた。前者はスタイリングが絶望的な惡さなので目を瞑る。オリンパスだと14‐42ミリezといふ電動ズームレンズがある。マイクロフォーサーズ用の所謂標準ズームでは、おそらく一ばん小柄な筐体で、持ち歩きに便利さうにも思へる。但し28ミリ相当から始まるのは多少の不満を感じなくもない。12‐32ミリといふ24ミリ相当始りがあつて、また望遠にはそれほどの興味を持ちもしないから、さう思ふのだらう。小ささと利便の天秤となるのだが、どちらを撰んだとしても、万能性は認めざるを得ない。だつたらどちらでも暫く使つて、GF1に流用する方法もあると云はれたら、それはさうとして、それだと手持ちの14‐45ミリの立場がなくなつて仕舞ふ。大体ボディキャップ・レンズを使ふ為に入手したGF3に、“当り前に使へるレンズ”をつけるのは、本末転倒も甚だしい。ひとまづは無駄遣ひを控へ(または我慢す)るのが、あらまほしい態度であらう。それにボディキャップ・レンズはもう1枚、15ミリがある。これを暫く使つてから、改めて今後の使ひ方を検討しても遅くはない。面白くも何ともない結論だけれど、GF1と2台で持ち出すことも考慮の隅に入れねばならず、さうなるとパズルめいたことになつて、實のところ、これは中々に樂しい閑潰しなのである。