閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

903 要る物と慾しい物と

 これまで書いてきたとほり、我がGRⅢの見た目は、大体が整つてきた。それで今、アクセサリのひとつで少々、迷ひを感じてゐる。型番は何だつたか、ワイド・コンヴァータを附ける時に使ふアダプタ。先に云ふと、コンヴァータを使ふ考へではない。そつちはGRデジタルⅡに任す積りでゐる。

 そんなら迷ふ理由は何かと訊かれさうで、フードやフヰルタを使へるんですと応じたい。GRⅢには(いはゆる)純正フードとフヰルタが用意されてゐない。また本体に直附けするねぢもない。ゆゑにフヰルタやフードで游びたければ、アダプタを入手せざるを得ない。数千円程度。

 物体として見ればそのアダプタは、接点附きで四十九ミリメートル径のねぢが切られたプラスチックの筒に過ぎない。その筒は必要なのか、どうなのか。取り附けた時の見た目は間違ひなく惡くなる。そして嵩張りもする。モノクロームでフヰルタを用ゐるとか、明確な目的が無いのなら、積極的に手に入れなくてもこまりはしない。馴染みの呑み屋で一ぱい樂めるくらゐの値段でもあるし、そもそもさういふアクセサリ類は、GRデジタルⅡでひと通り、揃へてある。GRⅢで揃へなほす理由は見当らない。

 理窟としてはさうである。

 一方で何となく慾しい、といふ気分があるのも事實で、何となくの気分だから、根拠に基いた話ではない。その気分とやらは要するに、游びの余地…少くともその可能性が手に入るんではないか、といふ勝手な(若しくは都合のいい)感覚と云つてもいい。さう考へると数千円なら廉にも思へる。

 本当か知ら。この手の玩具だと、購入した直後に附け外しを繰返し、暫くすると飽きてしまひこむか、気紛れに使ふ程度になるのが私の通例である。頻度といふ實利的な視点で見れば、数千円が数百円でもたいへん勿体無い。併しモノクローム用のフヰルタ(銀いろの枠がいい)と、サード・パーティのフードを附け、縦吊りにぶら下げたら…この場合に限つては、革製のストラップが望ましい…、前言を翻して恰好よささうにも感じられ、ならば買ふのもありな気がしてくる。

 そこまで考へ…私の中の冷静な部分が、押し止める聲をあげるのが聞こえた。数千円の筒を買ふことで、フードとフヰルタとストラップ、それからさういふ全部を附けて入れられるケイスが必要になるぢやあないか。さうなつたら全部で倍くらゐの出費を予定しなくてはなるまい。尤もである。幾ら無駄遣ひに鷹揚な私だつて、程度は弁へねばならない。

 (要ると決められれば、話は簡単なんだがなあ)

GRⅢを肴に呑みながら、そんなことを考へた。