閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

982 駄目な大人の夕方と明け方

ビジネスホテルに泊る樂みのひとつは、その近所や驛前の呑み屋に潜り込むことである。併しどうもチェックインをしてから、わざわざ出るのは面倒な場合もあつて、そんな時には、予め麦酒だのお摘みだのを買つておけばよい。 「家で呑むのと、大して変らんぢや…

981 喜ばしきは

早鮓に敢ての澤乃井普通酒。 おぼろ豆腐御膳には大辛口。 一番汲みも呑んだ。 何年か前に代替りしてから、礼儀作法を學んだのか、たいへん落ち着いた佇まい。 買つて直ぐ呑んだ時は、やや酸味が立つてゐたが、翌朝になると、それも佳い感じに収まつて、贅沢…

980 長寿への懸念

廿歳そこそこの頃、五十歳を過ぎて生きるとは思はなかつた。卅年後に生きてゐる自分の姿を、想像するのは六つかしかつた。その感覚は今も、からだの隅に残つてゐる。 (おれは本当に、半世紀余りも、生きてきたのだらうか) さう不思議に思ふ時もある。年齢に…

979 狐

黑おでん。 大根。 結び蒟蒻。 信太。 このおでんは、静岡風の筈だが、信太を品書きに用意したのは何故か知ら。参考までに信太は"シノダ"と訓む。大坂に信太山といふ地名があり、そこには狐がゐる。狐は鹿と並ぶ神使の獸。その狐…神聖な獸である…が好む油揚…

978 不意のまあいいか

その積りは無かつたけれど、まあいいかと思つて、呑み屋に入つた。勿論、(ある程度は)馴染んだ(筈の)呑み屋で、併し何がまあいいのか。坐り馴れたカウンターの端に席を取つて、壁にふと目をやつたら、"月山味噌胡瓜"とあつた。訊くと山形の月山から取り寄せ…

977 感想文~ウルトラマンブレーザーの前半を観て

先に云ふとこの稿は、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏も毎週、『ウルトラマンブレーザー』を樂みに観てゐる、といふ前提で書いてある。さうではないひとにとつては、とても詰らない筈なので、念を押しておきますよ。 ここで取り上げるのは前半の十二回。 各話のタ…

976 厚揚げはえらい

厚揚げはえらいものだと思ふ。 註文を受けてから揚げて出された厚揚げほど、落ち着いて呑める雰囲気を感じるお摘みは少い。唐揚げも確かに喜ばしいけれど、昂奮が先に立つてしまふ。 多すぎるくらゐの削り節、刻み葱、おろし生姜に、ぽん酢か醤油。そこに大…

975 安定の手帖

神無月に入ると気になりだすのが、來年の手帖に就てで、勿論これは紙の、手書きの手帖を指してゐる。令和も五年が過ぎ去さらうといふのに、未だペンと紙かと思はれる向きもあらうが、そちらの方が使ひ易いんだもの。 例年買ふのは高橋書店で、令和六年もさう…

974 手すさびレンズ

銀塩一眼レフが、カメラの中心になつたのは、昭和卅年代の半ば以降だと思ふ。当時の交換レンズは、五十ミリを基準に、広角側は卅五ミリか廿八ミリ、望遠側は百卅五ミリだつたといふ。但しカメラ本体と五十ミリまでは買へても、広角望遠レンズまで手を伸ばす…

973 気紛れとポテトフライ

偶に、或は屡々足を運ぶ呑み屋での問題は、摘みがおほむね決ることで、一例を挙げると、串焼きのお任せ(六本。最近は全部、塩で焼いてもらつてゐる)、塩キヤベツ、蛸の唐揚げ、ハムカツ、マカロニ・サラド、鶏皮のぽん酢和へ、焼賣。別の呑み屋ならハラミ(二…

972 ニューナンブの議論

お酒とお蕎麦と冩眞と冩眞機を偏愛するニューナンブといふ團体に私が属してゐるのは、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏にお馴染みだと思ふ。さうでなくても、お馴染みなのだと考へてもらひたい。 そのニューナンブの構成員にS鰰氏がゐる。穏やかな顔つきの大人…ここ…

971 為の記録

この何ヵ月か、眞面目に撮つてゐない。私が云ふのは、スマートフォン…ここでは常用のAQUOS sense3を指す…のカメラ機能を使つた、呑み喰ひの記録のことである。特段の切つ掛けがあつたわけではないし、手帖への書きつけは續けてゐるから、きつと (別にまあ、…

970 明解

この提灯に匹敵するのは、記憶にある限り、北谷の”トリビー”くらゐなのです。

969 タタールのソース

タタール風ソースの意で、タルタル・ソースと呼ぶ。ステイクのタルタルから、転じたものか。念の為に云ふと、ステイクの方のタルタルは、細かく刻んだ生肉を、香草や香辛料で調へた料理。タタールは筋を切つた馬肉を用ゐたさうで、ヨーロッパ人はきつと、騎…

968 稀な愉快

獨りで呑んでゐると、稀に愉快な出來事に遭遇する。過日がさうだつた。何と云ふこともない、詰り私好みの廉な呑み屋に、ふらつと女性が入つてきた。女性が獨りで呑む姿は昨今、珍しくもないけれど、ブロンド碧眼なら話はちがふ。何を呑むのか知ら。気になつ…

967 潜り込むやうな話

レンズ交換の出來るカメラに、是非とも用意してもらひたいのは、マクロレンズ…ニコンは頑なにマイクロと呼んでゐるが、この稿ではマクロで通しますよ…だと思ふ。 マクロレンズの定義は六つかしいから、大雑把に"一般的なレンズより、被冩体の近くに寄つて撮…

966 GRⅢを乗せる話

五月のいつだつたか、[GRⅢでも使へる棒]と題して、一脚が慾しいと書いた。その一脚を先日、贖つた。スリックの中古品、雲台が附いて二千二百円。四段だけれど、三段まで伸ばせば、私の視線より少しひくい…詰り不便ではない…程度になる。手首を通せるストラッ…

965 機種変更に纏はる話

スマートフォンは、シャープのAQUOS sense3を、常用してゐる。發賣当初に購入したから、使ひ始てそろそろ五年目に差し掛かる。旧式なのは重々判つてゐるけれど、新しい機種にしたいかと訊かれたら、首を傾げてしまふ。 ・電池の交換が自分で出來ない。 ・日…

964 古式驛弁がよささうな話

宇都宮、大坂、神戸、上野の各駅驛のどこかが、發祥だと云はれてゐる。おにぎりとたくわんを、竹の皮で包んであつたといふ。驛弁の話。驛で立賣りしてゐたさうで、どの驛が發祥としても、何しろ明治の頃ですからね、その辺りは止む事を得ない。 列車内で食べ…

963 タマゴサンドの話

何の動画で観たのか、記憶は曖昧なのだが、外ツ國人にタマゴサンドが人気なのだといふ。日本のコンビニエンス・ストアで賣つてゐるやつ(なので"タマゴサンド"表記にした。この稿はこれで通しますよ)である。うで玉子を崩し潰したのを、マヨネィーズで和へ、…

962 ペンタックスの一眼レフが慾しい、といふ話

手元に三本…単焦点が二本とズーム・レンズが一本…、Kバヨネット・マウントのレンズがある。銀塩のボディも二台持つてゐる(どちらもリコー)けれど、令和の今に常用出來るかと云ふと、流石に無理がある。主に費用の点で。 ここで年少の友人である、クロスロー…

961 葱の白

廉な呑み屋の品書きに欠かせないもつ煮には、白葱を刻んだのが欠かせない。その場合、下品と思へるくらゐ、どつさり乗せるのがこつである。味のごてごてを、白葱が受けとめるからで、これを脂つ気と相性がよろしいと云つてもいい。 過日その呑み屋で、鶏皮ぽ…

960 白と黑

画像は過日、足を運んだ小さな呑み屋で、店長が 「信濃に行つてきたんで、お土産です」 と出してくれた山菜…確かこごみだつたかな。おまじなひ程度の辣油で味をつけてあり、酎ハイに中々似合つた。 (かういふのを悦べるまでに到つたのは、小父さんになつた證だ…

959 實驗

ある晩、ハムカツを摘みに、酎ハイをやつつけた。 ハムカツはウスター・ソースで、衣をとろかすのがうまい。 不意に、そのとろけた衣を、GRⅢで撮つたら、どうなるのか知らと思つた。 實驗である。 撮つた。 成る程。

958 コロッケを

立ち喰ひ蕎麦の種ものは、大体のところ、好きである。 尤も多少の例外はある。 第一にはカレー南ばん(品書きにはかう書かれてゐることが多さうに思ふ)で、カレーとの相性がよいのは、小麦系統の麺ではないだらうか。併しまあ、こつちはかまはない。カレー饂…

957 バランス

肉と野菜はバランスよく食べなくてはいけません。 後から玉葱のフライも追加しました。 なのでバランスの取れたお摘みだつたと思ふです。

956 サブカメラ(後)現實的に

さうは云つたつて、GRⅢと(一応は)サブカメラとしてのGRデジタルⅡの併用は、現實的なのかといふ疑問はある。GRⅢはそのまま、GRデジタルⅡには(ワイド・コンヴァータを附けて)、モノクロームのスクウェアを任す形が想定出來て、この二台をどんな風に持ち出せば…

955 サブカメラ(前)空想的な

サブカメラ、と呼ばれるカメラがある、らしい。 どんなカメラがさうなるのかは、よく判らない。 昔は…と遠くを見ても許される程度に、齢を重ねてゐるのですよ、私は…ライカをメインで使ふひとが、偶に撮る望遠や近接の為に、一眼レフを持つことがあつた。或…

954 解決を望…

長年の疑問がある。 解決してゐない。 「カレー・ライスに適ふ酒精は何か」 といふのがその疑問で、いやそこの貴女、笑はれてはこまります。こちらは大眞面目なんですから。 麦酒。 ハイボール。 葡萄酒。 いづれもしつくりこなかつた。何といふか、一体感に欠…

953 遠ざかる

さういへば長いこと、洋食から遠ざかつてゐる。 ハンバーグ。 クリーム・コロッケ。 チキンカツ。 ポーク・ソテー。 烏賊や白身魚、玉葱のフライ。 ビーフ・シチュー。 サウザンアイランド・ドレッシングをたつぷりかけた生野菜に、マッシュしたポテト、ケチ…