閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2022-01-01から1年間の記事一覧

790 本の話~第壱號カルテ

『カメラバカにつける薬』 飯田ともき/インプレス 漫画である。この手帖には"漫画の切れ端"といふカテゴリもあるのだが、あつちで取り上げるのは旧作だから、"本の話"で扱ふことにする。 知る限り、同人誌發。今はデジカメWatchといふWebサイト、それから紙…

789 冷し中華の荒涼を

冷し中華の文字を見ると昂奮する。 暑い時季は何しろ食慾が出ない。だから、素麺や冷や麦やざる蕎麦でなければ、豆腐が主食になる。併し素麺冷や麦ざる蕎麦豆腐では、栄養といふか何といふか、さういふのが乏しい。食慾が出ないのと、空腹を感じるかどうかは…

788 ワイド・コンヴァータ

過日、所用があつて中野に出掛けた。所用と云つても大したことではないから、詳しくは触れない。 そつちを片附けた後、Fカメラ店を冷かす積りで入つた。さうしたら我がGRデジタルⅡ用のワイド・コンヴァータが置いてあつた。それはいい。實はこつそり探してゐ…

787 梯子どんたく~余談篇

帰宅した翌日…月曜日…は有給休暇を取つて、パンツを洗つた。だからこれは余談篇である。筋が通つてゐるでせう。 ニューナンブの皆が揃はなかつたこと。 暑さが莫迦ばかしいくらゐだつたこと。 この二点(都冩美に行き損ねたのも加へるべきか知ら)を除くと、今…

786 梯子どんたく~昭島篇

昭島驛に降りたのは午后二時過ぎ。かう書くと我が親切な讀者諸嬢諸氏は、チェック・インには早すぎではないかと心配して下さるだらうが、我われは東横インの會員である。會員は午后三時にアーリー・チェック・インが出來る。驛前のモリタウンだつたかで晩め…

785 梯子どんたく~澤乃井篇

体調が惡くなつたのですとS鰰氏から聯絡があつたのは、どんたく当日週の中頃で、それは止む事を得ない。その暫く前にクロスロードG君からも、諸事情での不参加の報せもあつた。お酒はいいものだが、不調や事情を押して呑むものではないし、押して呑んでもま…

784 梯子どんたく~準備篇

澤乃井に行くには当然、電車を使ふ。 頴娃君が可及的速やかさで予約してくれた藏の見學は、午前十一時の回だから、そこに合はせなくてはならない。澤乃井に行く為の最寄は、青梅線の沢井驛で、青梅線は本数が少い。先行して時刻表を確める必要がある。わたし…

783 梯子どんたく~打合せ篇

先にニューナンブに就て簡単に云ふと、お酒と冩眞、カメラと蕎麦を愛好する不逞の輩である。頴娃君とわたしで結成した。今はS鰰氏とクロスロードG君を含めて四人。呑み屋の卓を囲むのに丁度いい。それに四人は、同じ話題を囲める最大の人数でもある。 とは云…

782 樂みの地図

呑み助もある程度になると、流れが出來る。流れと云うのは最初は某所Aで麦酒と串焼きを、そこから別の某所Bで葡萄酒にチーズ、最後は某所Cに移ってお酒と焚きもので〆るとか、そういうことを指す。好きな呑み屋、お馴染みの呑み屋が何軒かあるのは、人生の豊…

781 幸せな三位一体

毎度同じ話を繰返すみたい、というより、實際繰返しているのを気にせず云うと、呑むのと食べるのはわたしの場合、ほぼ一直線に結びついている。旨いものを食べたら呑みたくなるし、摘みのない酒席なぞ考えたくもない。それが人情の正しい發露だし、呑み助に…

780 一行で書け

"白身魚フライと海苔おかか弁当"とか、そんな名前だった。五百円くらい。 「白身魚のフライに海苔とおかかの弁当って、すりゃあ見れば判るさ」 と肩を竦めたくなる程度に、そのままの名附けで、コンビニエンス・ストアだけではなかろうが、安直ですなあ。尤も…

779 波の姿

お酒を呑む…ここでは日本酒を指している…以上、肴を欠かすわけにはゆかない。酒肴という素敵な熟語もあるくらいで、お酒と肴は金剛界と胎藏界のように、不二と云える…と書いたら、お大師さまの周辺から咜られるだろうか。併しうまいお酒は肴を呼び、佳い肴が…

778 機會

画像は過日、呑み仲間の女性と共にした久しぶりの酒席で註文した、紅生姜の串焼き。以前に別の呑み屋で、紅生姜の串揚げを食べたが、東都で紅生姜を使った摘みは滅多に目にしない。頼んでみない手はないと思った。出たのがこれだったから、少々驚いた。品書…

777 シヤワセのハムカツ

ハムカツは正しいんである。 これはまったき世界の眞實。 何と云っても旨いんだから。 正直、ごはんのおかずにはなりにくい。 おやつに食べるのも些か、無理がある。 併し麦酒や酎ハイの傍にあると、こんなに嬉しいお摘みも見当るまいと思えてくる。 とんか…

776 コローキアルなハム・サンド

ある朝、詰り仕事の前なんですが、家でトーストを食べるのが億劫になったので、通勤の途中にあるコンビニエンス・ストアに立ち寄ったわけです。何を食べるか数秒間迷いまして、撰んだのが二百七十円のハム・サンド。仕事場に用意された休憩所で食べたんです…

775 閃き

發祥に色々の説はあるらしいけれど、そこは触れない。わたしの印象だと、揚げた鶏肉を甘酢に漬け、タルタル・ソースを添えた料理が、チキン南蛮である。うまいですな。ごはんと一緒でいいし、麦酒にも合う。数ある鶏肉料理で番附けを作ったら、横綱大関は難…

774 ユル

弛緩といふ熟語はどちらも"ユルム"と訓める。 心理肉体の張り詰めた感覚。 世間さまの締めつけの感覚。 さういふのがほぐれる気分を示してゐる気がする。堅苦しく"シカン"と訓むより"ユルム"方が、語感に適つてゐるのではないだらうか。 と始めたのには、ち…

773 列車と習慣に就て

列車と云ふのだから、通勤電車とはちがふ。通勤電車にだつて習慣があるのは勿論として、何時何分どこ驛發の何輌目の何番扉辺から乗るとか、そんなところでせう。後はスマートフォンでニューズや天気予報を確めるとか、眞面目な會社員ならメールその他のチェ…

772 "ギャラリー 居酒屋"に就て

飲み屋というものがいかにありがたい存在かということは知っている。画家が自分の絵をならべて個展をするように、飲み屋というのはあるじ自身の人間の個展なのである。人はその人間に触れにゆくわけで、酒そのものを飲むなら、自動販売機の前でイスを置いて…

771 新書に就て

新書と呼ばれるやや縦長の形態の本がある。直ぐに思ひ浮ぶのを挙げると、岩波中公講談社辺りか。文春や集英社や新潮にもある。他にもある筈だが、よく判らない。 小學六年生の時に買つた講談社が、初めての新書だつた。著者も題名も忘れた。ノアの洪水伝説に…

770 東下御用列車

西上は游び。 東下は所用。 北上と南下を考へないのは、普段或は定期的に北上も南下もしないからである。東京を起点に北上南下したら、どこになるだらう。暇な夜の肴として考へることにする。 「取つとらンのか」 と父親が云つたのは、御用新幹線の切符の話で…

769 大坂の食卓に

父親は食卓に細々乗つてゐないと、不機嫌になる。それも全部食べるとは限らない。お箸はつけるが、満足したらお仕舞ひになる。惡い癖だと思ふ。幼少の一時期を朝鮮半島(平壌かその近郊らしい。詰り事と次第でわたしは今ごろ、偉大な指導者萬歳を叫ぶ男となつ…

768 大坂の棚の奥から

大坂の家の棚の奥に、オートメーターⅣFと、そのアクセサリが埋れてゐた。 若い讀者諸嬢諸氏は御存知なからうから云ふと、乾電池で動く単体の露光計。 画像には無いが、共に立派なケイスに入つてゐた。 いつ頃、何の目的で買つたものか、丸で覚えてゐない。マ…

767 大坂の本棚に~ライカの本

アサヒカメラ別冊が二冊と写真工業出版社の本が二冊。 四半世紀ほど遡つた時期、ライカが慾しくて仕方なかつた頃があつた。併しライカのことは何も知らない。何もと云ふのは不正確で、ふたつは判つてゐた。 第一に色々の機種があること。 第二に諸々が高額で…

766 大坂の本棚に~街道をゆく

司馬遼太郎/朝日文庫 この小説家を知つたのは、小學校の五年生か六年生の時に讀んだ、文春文庫の『竜馬がゆく』だつた。母親の本棚から勝手に持ち出した。幕末史…もつと大きく、近世の日本史といつてもいい…には無知だつたのは当然で、併し熱中して讀んだ。…

765 大坂の本棚に~コンパクト・ディスク

世の中にコンパクト・ディスクがあつたことを知つてゐるひとは、ひよつとして古老の部類になるのだらうか。 一体わたしは臆病なたちなので、新しい技術には中々手を出せない。それだものだから、デジタル式のオーディオ・プレイヤーに飛びつけないまま(いや…

764 大坂の本棚に~上橋菜穂子

"守り人"のシリーズなど/新潮文庫 母親には少女小説趣味がある。村岡花子が訳した"赤毛のアン"に夢中だつたと云ふくらゐで、後は歴史小説(司馬遼太郎)と探偵小説(クリスティとクィーン)さういふ趣味の持ち主にとつて、上橋菜穂子は好感を抱くに足る小説家だ…

763 大坂の本棚に~ちくま日本文学全集

日本の文學者たち/筑摩書房 少し豪華な装訂の、まあ文庫本と云つていい。 一冊千円で全五十巻。筑摩はよく全巻を出せたと思ふし、わたしもよく全巻を買つたと思ふ。尤もほぼ、目を通してはゐないのだけれど。 画像は第三回配本の第三巻、内田百閒で、平成三…

762 大坂の本棚に~一夢庵風流記

隆慶一郎/読売新聞社 初版は平成元年。手元のは翌平成二年の第十刷。 天下の奇人…傾奇者、慶次郎前田利益を主人公に云々と説明するより、漫画『花の慶次』の元になつた小説、と云ふ方が通るかも知れない。中身については後日、"本の話"で触れることにする。 …

761 大坂の本棚に~ドリトル先生 アフリカゆき

ヒュー・ロフティング/井伏鱒二 訳/岩波書店 "ドリトル先生"ものの第一巻。"ドリトル先生物語全集"の第一回配本でもある。 菊判。クロース装。上製函入り。製本が立派な上、ロフティングじしんが描いた挿絵も収めてある。 これだけでも十分に贅沢なのに、井…