閑文字手帖

馬手に盃 弓手に肴

2024-01-01から1年間の記事一覧

1077 いつもとはちがふ場所

馴染んだ(と思つてゐる)呑み屋に潜り込む。 大体この辺りに坐ると決つてゐる。 とは云つても、必ず坐れる、とは限らない。 先客がそこに坐つてゐる場合もあつて、何といふか (ちよつとそこの阿仁サン、あンたが坐つてはンのは、儂の席なンやけどな) 聲にする…

1076 おにぎりは保守好み

正しい使ひ方かどうか、知らないけれど、私は呑み喰ひに関しては、保守的な男だと思ふ。新奇珍奇に手を出さないといふ意味だから、冒険心に欠けた臆病な態度と云ひかへる方が、實態に即してゐさうにも思はれるんだが、ここは恰好をつけ、保守的と称したい。 …

1075 GRデジタルⅡで撮つてゐた

くすんだ空。 くすんだ壁。 くすんだ、重機。

1074 GRデジタルⅡは游具的に

これはどうしたつて(優劣は措いても)、GRⅢとの比較をせざるを得ない面がある。尤もどうしたつてGRデジタルⅡに勝ちみはない。とは云へ、勝ちみが無いから駄目とも限らず、書き出しから迷つてゐるなあ。 ひとつ、GRⅢに優る点を挙げれば、僅かながら小さくかる…

1073 GRデジタルⅡを呑み屋に聯れて

ワイド・コンヴァータを附けたGRデジタルⅡを持ち出し、ふらふらと何枚か撮つたその足で、馴染んだ呑み屋に潜り込んだ。先客は小父さんのふたり組。受け皿に置かれたコップが目に入つた。既に冷酒をきこしめてゐると判つた。こちらはホッピーの黑。お摘みは少…

1072 GRデジタルⅡを持ち出して

外題のとほり。 肩掛けのストラップを附け、ケイスに入れたのを、小さなショルダーバッグに(ストラップはかろく結んで)はふり込んだ。意外なほど収まるし、バッグを斜めに掛けても、予想より重くない。 GRデジタルⅡにあてがつてゐるのは、リコーの純正ケイス…

1071 GRデジタルⅡを使ふ前に

皐月はGRデジタルⅡを使はうと決めた。GRⅢとちがふ使ひ方にするとだけ決め、先づは換算廿一ミリ(相当)になるワイド・コンヴァータを附けた。 重くて驚いた。 正確には、硝子の塊を無理に附け、重さの均衡が崩れた違和感で、その辺の感覚をリコーのひとは解つ…

1070 GRⅢ、の話ではなく

今さら改めるまでもなく、私が主力とするカメラは、GRⅢである。デジタルカメラとしては、異例…異質の長命機。現在に到つても派生機が出るくらゐだから、最初の設計が余程に優れてゐたと云つていい。 その"最初の設計"を何に置くのかは、議論の余地があるとし…

1069 曖昧映画館~旗本退屈男

記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 市川右太衛門の映画主演三百本目の記念。 東映オールスターの大娯樂剣戟映画で、片岡千恵藏、大友柳太朗、月形龍之介、大河内傳次郎から、若い萬屋錦之介(当時は中村錦之助だつた)、大川橋蔵、東千代之介、里見浩…

1068 春野菜を満喫した後

野菜の前に四季の冠をつけ、一ばん旨さうに感じるのは、春であらう。瑞々しさ、新鮮さ、やはらかさと甘み、香りの高さを束ねたやうな語感が、春野菜の三文字にはあつて、その春野菜を使つたちやんぽん麺なのだから、大きに期待して註文したのであつた。 画像…

1067 品下り

過日の夜、焼酎ハイを弓手のお摘み。 一ばん奥手にはミンチカツ。 挽き肉を小判叉は俵の形に纏め、衣を附けて、コロッケのやうに揚げると出來上がる。本來を考へると、随分と手間だらうに、意外と廉に食べられて有難い。 ウスターソースを、たつぷりかけて、…

1066 GRⅢ、派生機に就て

考へてみると、GRⅢには派生機が多い。street、dairy、それからurbanと銘打つた外観ちがひ。レンズを四十ミリに変更したGRⅢxと、更にその見た目ちがひ。叉ソフトウェアの新設だか変更だかを施したモデル(HDFと呼ぶのださうな)を出すさうで、かういふ展開が出…

1065 玉子と赤茄子

先日の夜、ふとその気になつて、某所の呑み屋街に足を延ばした。延ばすと云つても、陋屋から一驛だから、わざわざといふ距離ではない。 久し振りである。 新しい看板が幾つも並んでゐた。それだけ潰れたお店があつたことを示してゐて、何とも複雑な気分にな…

1064 捻ねもの気取り

ニコンと云へば、Fマウントである。 Fマウントと云へば、"不変"である。 令和六年の今、正しくは"であつた"と、過去形にしなくてはならないけれど。 カメラ好きの一部に、製造が(事實上)終つてから、そのカメラ(乃至マウント)にそそられる変態がゐて、念の為…

1063 GRⅢ、収め方に就て

GRⅢを持ち歩いてゐる。 f64のポーチ(といふのか)に入れ、カラビナフックでぶら下げてゐる。キャップとリスト・ストラップを附け、余裕のある収まり具合なので、その点に文句は無い。そのGRⅢ入りポーチを、何のどこにぶら下げるか。これが目下の問題…訂正、課…

1062 發見

お摘みに迷ふ夜には 串焼きの盛合せをば 何とかなるものです

1061 どうぞ、こちらへ

池波正太郎の随筆を讀むと、寿司屋で呑む話が出てくる。初めての店だと、隅のテイブルに着いて 「並を一人前、それからお酒を一本、ください」 などと註文する。何度か通へば大将がきつと 「旦那、どうぞこちらへ」 カウンタへ招いてくれるさうで、何と云ふか、…

1060 現代離れ

何回か前、コシナ・フォクトレンダー銘のベッサTを話題にした。今回はベッサLを話の種にする。 ライカねぢマウント。 ファインダは無し。 測距の機構も無し。 但し露光計は内藏。 筐体はプラスチック。 要するに現代風(といつても、ベッサLが發賣されたのは…

1059 歯触り

お馴染みになつた(と自分では思つてゐる)呑み屋で、ホッピー(黑)のお供にと、久し振りに蛸の唐揚げを註文した。鶏の唐揚げも浮んだけれど、お晝がチキンカツだつたから、ここは蛸に任すのが、流れだらうと思つたのである。 この手帖で以前、蛸の味に就て触れ…

1058 リスタート

手元にはGRⅢとGRデジタルⅡ、それから三台のマイクロフォーサーズ機に四本のレンズがある。銀塩機(KマウントやEFマウント)を足すともつと増え、ひとりで持つには随分な数である。それで偶に、そのカメラ群が残らず無くなり、一から揃へるなら、何にするか知ら…

1057 好きな唄の話~カプセル

念の為に確めたら、平成四年のメジャー・デヴュー、且つ最初のシングルと知つて驚いた。女性だけで構成されたラテン・ビッグ・バンドの先駆け…といふより、令和の今に到るまで、殆ど唯一の存在ではあるまいか。 捨てられることを悟つた女が、過ぎた日々(長か…

1056 共演競演

長く續くヒーロー番組を観てゐると、前作叉は旧作の主人公が、ゲストで登場する回がある。『仮面ライダー』で一文字隼人の二號が主役になつた後の、本郷猛一號の再登場が嚆矢と記憶してゐる。それから『帰ってきたウルトラマン』のベムスター回で、ウルトラ…

1055 気取るのも甚だしい

何の本で目にしたか、日本の料理の供し方は、西洋料理と較べて、器の撰び方が特徴的とあつた。うろ覚えで書くと、西洋人はお皿に珈琲のカップ、ナイフやホークに到るまで、統一的に用意する一方、日本だと複数の焼きもの、漆器を用ゐるさうで、妥当かどうか…

1054 怪しいなあ

何の記事で目にしたのか、あやふやな記憶で云ふのだけれど、巷では"オールド・コンデジがブーム"なのださうな。冩りすぎる現代のカメラに較べ、不完全な感じになるのが人気なのだといふ。怪しい。旧式のコンパクト・デジタルカメラなんて、使へるメディアが…

1053 これはこれで

東都で啜る麺と云へば矢張り蕎麦なんだが、近畿人であるところの私であるから、時に饂飩が恋しくなる。青葱をたつぷり散らし、温泉卵と揚げ玉に、とろろ昆布のひと刷毛があれば幸せといふものだ。他に油揚げがいいのは勿論、海老の天麩羅もよく、甘辛く炊い…

1052 不意の天玉

某日、夜。不意に某所の天玉蕎麦を思ひだした。さうしたら、舌と胃袋がその気分になつた。この手の食慾は、まつたくたちが惡い。 翌日、晝。天玉蕎麦が、頭のどこかに残つてゐた。これは足を運ばざあなるまい。空模様も丁度よろしく、ふらりと歩くことにした…

1051 二世紀半後の贅沢

本棚に"コシナ社がフォクトレンダーの銘を甦らせた頃"、出版されたムックが埋もれてゐた。長く見ない知人の顔を見た気分になつて頁を捲ると、最初のフォクトレンダー社の創業が(光學機器と精密機械の製造所だつたらしい)が、千七百五十六年と書いてあつたか…

1050 黑喰ひ

この稿では"シホコブ"と訓んでもらひたい。 ざつと調べた範囲で云ふと、明治の初期に原型が出來たらしい。内國勧業博覧會に出品したさうだから、注目に値する技術と考へられたのか。昆布を煮詰める技術じたい、もつと以前に確立されてゐたことを思へば、明治…

1049 視点

随分と以前、どこの公園だつたかで、盆栽の展示を見たことがある。手間暇の掛かる趣味らしい。出來の良し惡しはさて措いても、丹念に育てただらう松の枝振りに感心した。同行の友人は、人工的に過ぎるねえと、審美的な視点で批判して、正しい一面を衝いてゐ…

1048 方向ちがひ

スマートフォン…au版のAQUOS SHV45を相も変らず使つて、呑み喰ひを記録してゐる。ごく一部はこの手帖や、インスタグラムにアップロードをしてもゐる。我が数少い讀者諸嬢諸氏の何人かは、見たことがあるかも知れない。 大体の場合、そのままは使はない。程度…